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感動をつくる人たち|第11話 舞台は、見えない人に守られている

  • 4月25日
  • 読了時間: 3分

更新日:4月27日



舞台が何事もなく終わること。

それは、当たり前のようでいて、決して当たり前ではありません。


客席から見えるのは、華やかな照明、音楽、笑顔、そして拍手。

けれど、その舞台の裏側では、たくさんの人たちが“何も起こらない本番”を守っています。


舞台監督、音響、照明、映像、衣裳、進行スタッフ。

それぞれが持ち場で目を配り、耳を澄ませ、次の瞬間を想定しながら動いています。


以前、舞台稽古中に、ステージ上から思いがけない落下物があったことがありました。

その時、近くにいた舞台監督が、とっさに出演者をかばい、守ってくれたことがあります。


大きく語られることはない出来事かもしれません。

けれど、あの一瞬の判断には、現場を預かる人の責任と覚悟がありました。


舞台には、拍手の届かない場所で、こうして人を守っている人たちがいます。


そして、守っているのは本番だけではありません。


リハーサルもまた、舞台を守るための大切な時間です。


私は、出演者がリハーサルで失敗しても、怒ることはほとんどありません。

なぜなら、リハーサルでは、いくらでも間違えていいと思っているからです。


そこで起きた失敗は、本番で起きないための、大切な発見だからです。

だから私は、失敗して落ち込んでいる出演者に、こう声をかけることがあります。


「いいリハーサルだったね」


その一度の失敗が、作品を強くする。その一度の気づきが、舞台を守る。

私は、そう思っています。

舞台には、「セリ」と呼ばれる昇降装置があります。

出演者が現れたり消えたり、舞台に魔法をかけてくれる、

私の大好きな舞台機構のひとつです。


けれど、美しいものほど、扱いには責任が伴います。


ある作品のリハーサル中、床にはその位置を示す印がつけられていました。

本番では、その場所に大きな穴が開く設定です。


何度説明しても、あるダンサーがその場所を走って横切ってしまうことがありました。


その時私は、思わず手にしていたペンを床へ投げて言いました。


「そこは通ってはいけないって、何度言えばわかるの。大怪我どころか、ダンサー生命まで失うよ!」


驚いた空気が流れました。

でも、その日から誰一人、その場所を軽く考える人はいなくなりました。


何も起きない本番ほど、価値のある本番はありません。


けれどその裏には、見えないところで準備し、気づき、支え、守っている人たちがいます。


舞台は、見えない人に守られている。

そのことを知るだけで、華やかな景色の奥にある、たくさんの想いに気づかされます。


またひとつ、舞台の見方が、少し変わるかもしれませんね。



中間裕子(Y.Ai.Nakama)

 
 
 

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