感動をつくる人たち|第13話 音楽がつくる、ライブショーの物語

ミュージカルでは、幕が上がる前に、
オーケストラピットからオーバーチュアが流れることがあります。
劇中に登場する主要なメロディーが、ひと足先にメドレーとなって響きはじめる。
それは、ただの前奏ではありません。
プロローグは、物語の扉です。
その音を聴きながら、観客の心は少しずつ舞台へ向かっていきます。
これから何が始まるのだろう。
どんな景色に出会えるのだろう。
期待が高まり、胸が弾み、やがて幕は静かに上がる。
もうそこは、日常ではなく、物語の世界です。
テーマパークのパレードやライブショーでも、最初に流れるオープニングの音楽があります。
その数秒で、空気は変わります。
足を止める人。
笑顔になる人。
子どもたちの目が輝く。
音楽には、人をその世界へ案内する力があるのです。
そして音楽は、感情をそっと助けてくれます。
たとえば映画でも、何か危険が近づく場面になると、まだ何も起きていないのに、
心がざわつくことがあります。
低く響く音。不穏なリズム。少しずつ高まっていく緊張感。
人は映像の中で、音楽からも物語を感じ取っているのかもしれません。
反対に、明るく弾むリズムが流れれば、心は軽くなり、身体まで動き出します。
手拍子をしたくなる。
一緒に踊りたくなる。
知らない人同士でも、笑顔がつながっていく。
観客参加型のショーで、会場がひとつになる瞬間。
そこにも、音楽の力があります。
そして最後に、音楽は感動の頂点をつくります。
ひとつの強いメロディーが、何度も重なっていく。
テンポを速めたり、ゆるやかに落ち着かせたり。
ときに静かに息をひそめ、ときに一気に景色を広げるように高まっていく。
そんなさまざまな手法を用いながら、観客の気持ちは、自然に最高潮のラストへと導かれていきます。
気がつけば、胸が熱くなっている。
気がつけば、拍手をしている。
それもまた、音楽が連れていってくれた感動なのです。
舞台の上では、出演者が歌い踊り、照明が輝き、物語が進んでいきます。
けれど、その時間を見えない場所で進めているのは、音楽なのかもしれません。
ラストの一音が消えたあとも、その余韻は、観た人の心の中で生き続けます。
私は、そんな音楽の力を信じています。
音楽は、耳で聴くものではなく、心を動かすために存在しているのかもしれません。
今度、舞台や映画をご覧になる時に、一緒に流れている音楽を少し意識してみると、
その作品の中に、新しい発見があるかもしれませんね。
読んでくださってありがとうございます。
なにか心に残りましたら、応援いただけると嬉しいです。
中間裕子(Y.Ai.Nakama)




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