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感動をつくる人たち|第34話 緊張と解放が、感動をつくる

  • 5月18日
  • 読了時間: 3分

— 観客の“ 感情の波 ”をデザインする —




ショーが始まる、その瞬間。 私はいつも、最初の「つかみ」をとても大切にしています。


幕が上がった瞬間に目に飛び込んでくる景色。

静寂を切り裂いて流れ始める音楽。

空間を染める照明の色。

衣装の質感とカラー。

そして、そこに立つ出演者たちが放つ空気。


観客は、そのわずか数秒で、無意識のうちに「このショーの世界」に没入していきます。

だからこそ、最初に聴こえてくる音楽は、とても大事です。

その一音で、劇場の空気が一変し、その数秒で、観客の目の輝きが変わっていく。

「これから、一体 何が始まるんだろう」

その期待感を掴めるかどうかで、ショー全体の成否を分けるといっても過言ではありません。

もし最初の数分で心を掴み損ねてしまえば、その後の数時間でそれを取り戻すのは、並大抵のことではないからです。


幕が上がるずっと前から、観客の“ 感情の旅 ”は始まっているのです。


ショーづくりとは、ただ盛り上がる場面をパズルのように並べればいいというわけではありません。

華やかなナンバー。

迫力のあるダンス。

弾けるような笑い。

そして、 そして、息を呑むような静けさ。


私は時々、ショーづくりは “感情のジェットコースター” の設計に近いと思うことがあります。

高く上がり続けるだけのジェットコースターが存在しないように、ステージにも「緩急」が必要です。

ずっと緊張が続けば、人は疲れてしまう。

ずっと盛り上がっていても、その熱に慣れて麻痺してしまう。


だからこそ、ふっと肩の力を抜ける時間や、呼吸を整えられる瞬間が必要になる。


静けさがあるから、次の一音が心に突き刺さる。

やわらかな時間があるから、次の瞬間に爆発する拍手が、より大きくなる。


感動とは、強い刺激だけで生まれるものではありません。

「緊張」と「解放」を繰り返しながら、少しずつ心が動いていくことで生まれ、辿り着けるものなのかもしれません。


そして、その感情の流れをデザインする上で、私にとって「音楽」は、とても大きな存在であり、武器であり、相棒です。


選曲をしている時、私の頭の中では常に観客の呼吸を考えています。


「ここで一度、深く息を吐かせてあげたい」

「この余韻のあと、一気に景色を塗り替えたい」


レビューショーは、ただ曲を並べれば成立するものではありません。


例えば、オープニングで流れた“ つかみ ”のメロディー。

私はその象徴的なメロディーを、さりげなく曲間で入れてみたり、MCのBGMとして、ピアノだけの演奏で静かに支えたりすることがあります。


それは、同じメロディー(旋律)が耳に触れ続けることで、観客はショーという魔法にかかったまま、現実に戻ることなく旅を続けることができると思うからです。


私は、音楽を選曲し並べながら、観客の“ 感情の波 ”を組み立てているのかもしれません。


ショーの最後に起きる大きな拍手は、最後の一曲だけの力ではありません。


その前にあった緊張も、笑いも、静けさも、高揚感も。

そのすべてが重なり合って、最後の感動へと繋がっていく。


エンターテイメントとは、ただ「見せる」ものではなく、

観客の皆さんと一緒に、見えない感情の波を、乗り繋いでいく「心の旅」そのものなのかもしれません。



読んでくださってありがとうございます。  

心に残りましたら、応援いただけると嬉しいです。


中間裕子(Y.Ai.Nakama)



 
 
 

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