感動をつくる人たち|第36話 演出家と、お弁当の数
- 5月20日
- 読了時間: 3分

「演出家」という仕事に、みなさんはどんなイメージを持たれているでしょうか。
客席の後ろに座り、どっしりと腕を組みながら、 「そこ、もう少し間を取って」 「照明、あと2秒待って」 そんなふうに、舞台の上を鋭く見つめている人——。
たしかに、大規模なプロジェクトであれば、音響、照明、映像、衣装、舞台監督、制作進行……と、各分野の専門スタッフが揃い、演出家が“ 演出 ”だけに集中できる環境もあります。
でも、観客1000人規模くらいまでのイベント現場だと、私たちA.M.Jの場合 少し事情が変わってきます。
気がつくと、演出家がスタッフや出演者のお弁当の数まで把握して、表にしてクライアントに提出している……なんてこともあるのです(笑)。
まぁ 見積もりを作成している段階での話しですけどね。
けれど、スタッフの人数や、出演者の人数を把握していれば自然と数が頭に入りますし、楽屋割りひとつ取っても「誰と誰を同じ部屋にすれば、現場が円滑に回るか」まで考えてしまう。
早替えのある出演者は、袖のどこに配置すれば導線が良いか?
ヘアメイクのタイミングは、進行に間に合うか?
そうやって細部まで思考を巡らせているうちに、いつの間にか現場全体の流れを誰よりも把握している状態になります。
「どのシーンに何分必要か」
「転換にどれくらいかかるか」
「どのタイミングで休憩を入れれば、現場の空気が締まるか」
華やかなショーの世界のイメージからは、少し遠い話に聞こえるでしょう。
もちろん、本番の1ヶ月前ほどになれば、プロの舞台監督や運営チームが合流してくれます。
「大丈夫です、こちらでやっておきます」 その一言にどれだけ救われ、助けられてきたか分かりません。
本番が近づくにつれ、演出家の頭の中は「舞台そのもの」でパンパンになっていくからです。
だからこそ、周りで支えてくれる人たちの力は本当に大きい。
結局、舞台はひとりでは作れません。
演出家もまた、多くのスタッフに助けられながら、ようやく本番というゴールへ辿り着けるのです。
ただ、私は思うのです。
こうした“ 雑務 ”のように見える仕事も、実はかけがえのない時間なのではないか、と。
お弁当の数を数えることも。
楽屋割りに頭を悩ませることも。
分刻みのスケジュールを組むことも。
それは単なる作業ではなく、「誰が、どう動けば安心して本番を迎えられるか」を真剣に考えるプロセスそのものだからです。
演出家の仕事は、舞台の上だけを作ることではありません。
誰かが安心してステージに立てるように、見えないところを丁寧に整えていく。
それもまた、大切な「演出」のひとつなのだと感じます。
演出家は、魔法使いではありません。
誰よりも現場を泥臭く歩き回り、スタッフのお腹の空き具合から、演者の心の揺れまでを拾い集めていく。
もしかしたら、演出家という仕事の正体は、
究極の「御用聞き」なのかもしれませんね(笑)。
読んでくださってありがとうございます。
心に残りましたら、応援いただけると嬉しいです。
中間裕子(Y.Ai.Nakama)




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