感動をつくる人の原点|Season2 第12話 マエストロとの出会い

東京でダンサーの仕事を始めた頃、
私は、あるレストランのステージショーに出演することになった。
そのショーの演出家が、Larry Billman (ラリー・ビルマン)さん
細身だけれど背が高く、いかにも“アメリカ人”という雰囲気の男性だった。(笑)
そして、その瞳はとても優しかった。
後に私が、「マエストロ」と呼ぶことになる人物だった。
私は彼が手がける作品に関わりながら、それまで自分が知っていた劇場という世界の外にも、さまざまなエンターテインメントがあることを知った。
Larryさんは、作品をつくるだけの人ではなかった。
出演者を集めて、ダンスについての講義を開いてくれることもあった。
ジャズダンスをはじめ、さまざまなダンススタイル。
映画やミュージカルの話。
日本ではまだあまり知られていなかった世界を、実演を交えながら楽しく教えてくれた。
私たちにとって、その時間は毎回、新しい発見の連続だった。
そして何より、Larryさんはジョークが大好きだった。
いつも笑顔。
現場には自然と笑いが生まれる。
出演者だけではない。
スタッフも含め、その場にいる誰もが、Larryさんのことを大好きだった。
気がつけば、その笑顔を中心に、現場全体が一つになっていた。
そんな空気をつくることもまた、彼の才能だったのだと思う。
彼は、私に技術だけを教えた人ではない。
作品づくりの楽しさ。
仲間を信じること。
そして、人の心を動かすエンターテインメントとは何か。
その考え方を、背中で教えてくれた人だった。
あの頃、Larryさんから教わったことは、長い年月が過ぎた今も、私の中に残っている。
作品をつくる時。
仲間と向き合う時。
誰かを育てる時。
ふと立ち止まった時に、あの頃のLarryさんの笑顔を思い出すことがある。
だから今でも、私は敬意を込めて彼をこう呼んでいる。
マエストロ。
そして、
私の恩師。
読んでいただき ありがとうございました。
中間裕子(Yuko.Ai.Nakama)




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