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感動をつくる人の原点|Season2 第14話 受け継がれていく教え

8月24日
読了時間: 3分



基本的に、私の振付の現場では、フォーメーションをつける前に、全員で踊る部分の振付をします。

それが終わると、いよいよフォーメーションをつける作業に入るのですが、ここで、ある演出家から言われたことがあります。


「振付師は、センターから動くな。」


最初に聞いた時は、その意味がよく分かりませんでした。


当時の私は、フォーメーションをつける時、出演者のところまで行って、

「もう少し右。」

「あなたは、あと半歩前。」

そんなふうに、一人ひとりを自分で動かしていました。


すると、その演出家から、

「そこへ行って動かすのではなく、センターから指示を出しなさい。」

と教えられたのです。


ステージには、「場ミリ」という目印を付けます。

出演者が自分の立ち位置を覚えられるように、ステージ前に等間隔の番号を付けたり、横のラインが分かるように目印を付けたりします。


リハーサルの時は、スタジオの床にその場ミリを貼って、

「Aラインの3番。」

「Bラインの2番。」

と伝えることで、出演者は自分でその場所へ移動することができます。


もしかすると、出演者のそばまで行って位置を直してあげた方が、早いように思えるかもしれません。


でも、大勢の出演者がいる時は違います。


一人を動かすために振付師が右往左往していると、時間がいくらあっても足りません。


そして、もっと大切なことがあります。


振付師がセンターに立ったまま指示を出せば、

出演者だけではなく、舞台監督や周りのスタッフも、

「今、どの位置を直しているのか。」

を同時に理解することができます。


そして、もう一つ。


出演者は、自分の立ち位置を覚えると同時に、

フォーメーション全体の中で、自分がどこにいるのかを把握できるようになります。


このとき教わったのは、舞台上の位置のことだけではなかったのだと、今は思います。

同じ基準を持ち、同じ景色を共有すること。

それができれば、一人ひとりのところまで行って、すべてを自分で動かす必要はありません。

出演者自身が、自分のいる場所を理解し、自分で動けるようになる。


そして、それは出演者だけではありません。


演出家も、振付師も、舞台監督も、スタッフも。


そこにいる全員が同じ基準を共有していれば、それぞれが自分の仕事をすることができます。


「振付師は、センターから動くな。」


あの頃、教わった短いひと言。

それは、フォーメーションをつけるための技術だけではなく、

みんなが自分で動けるために、まず同じ基準を共有する。


そんな、ものづくりの基本を教えてくれた言葉だったのだと、今は思います。


そして私は今も、振付師と一緒に仕事をするとき、この考え方を大切にしています。


フォーメーションをつけるとき、振付師が出演者のところまで行って、一人ひとりを動かしていると、

「センターから動かない。」

そう伝えます。


かつて私が教えてもらったように。


現場で教わったことは、自分だけのものではありません。

教わったことを、次の人へ伝えていく。

そうやって受け継がれていくことも、ものづくりの大切な一部なのだと思います。



読んでいただき ありがとうございました。

中間裕子(Yuko.Ai.Nakama)

 
 
 

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