感動をつくる人の原点|Season2 第17話白黒の世界に、色が生まれた瞬間

前日に続いて、『ワン・マンズ・ドリーム』のお話です。
今回は少し趣向を変えて、
あの30分から何を感じ、何を学んだのか。質問に答える形で振り返ってみたいと思います。
1988年。
東京ディズニーランドで、このショーを初めて観た時のことです。
――最初に驚いたのは、何でしたか?
幕です。
それまで、劇場の緞帳とは、劇場ごとの顔のような存在があり、厚い素材に刺繍が施されていたり、色にも品格があったりと、私にとっての緞帳というものは、とても重厚な存在でした。
ミュージカルのOvertureが流れている時も、緞帳はそこに静かに存在している。
そんなイメージを持っていました。
ところが、『ワン・マンズ・ドリーム』では違いました。
テーマ音楽が始まると、舞台を閉じていた幕に描かれたお城が、光によってマジカルに輝き始めます。
まだ幕は開いていない。
でも、
もう何かが始まっている。
私は、その時点ですでにワクワクしていました。
――そして、幕が開くと?
そこに現れたのは、
モノトーンの世界でした。
セットも、そこに登場したミッキーもミニーも白黒。
そこでミッキーが、小さな花束を取り出します。
その花だけには、色がありました。
ミッキーが、その花をミニーへ贈る。
すると――
モノトーンだった世界に、色が生まれます。
七色の虹が輝き、舞台がカラーへと変わり、ミッキーもミニーもカラーの世界へ。
モノトーンだった世界が、一瞬にして鮮やかな世界へ変わっていきました。
――そこから、さらに世界が広がっていく?
そうなんです。
そこへ登場するダンサーたちの衣装も、とても印象的でした。
男性ダンサーは、ミッキーを思わせる赤いパンツに、黄色の蝶ネクタイとサスペンダー。
女性ダンサーは、ミニーを思わせる赤と白の水玉模様のミニドレスに、黄色のリボンがついたヒール。
ミッキーとミニーから生まれた色が、ダンサーたちへ、そして舞台全体へと広がっていくようでした。
さらに、たくさんのディズニーキャラクターたちも加わります。
幕が開いた時にはモノトーンだった舞台が、
色を持ち、
人が増え、
どんどん華やかな世界へ広がっていく。
私は夢中になって、その世界が開いていく様子を観ていました。
――今、演出家として振り返ると、あのオープニングから何を感じますか?
最初から、すべてを見せていないことです。
幕に描かれたお城が輝く。
幕が開くと、モノトーンの世界が現れる。
そこに一つだけ、色のある花が生まれる。
そして、その色が舞台全体へ広がっていく。
少しずつ、少しずつ、観客の期待を膨らませていく。
当時の私はもちろん、
「これは、こういう演出なんだ。」
などと分析していたわけではありません。
ただ、
「次は何が起こるんだろう。」
そう思いながら、どんどんその世界へ引き込まれていったのです。
そして後になって、自分が作品を創るようになってから気づきました。
ショーの最初の数分には、
観客をその世界へ連れていく、大きな力がある。
最初からすべてを見せなくてもいい。
一つずつ扉を開くように、
期待を積み重ねながら、世界を広げていく。
そういう演出のテクニックが、感動を生むのだと。
1988年に観た、
『ワン・マンズ・ドリーム』。
あのオープニングナンバーは、
私の演出の原点の一つになっています。
読んでいただき ありがとうございました。
中間裕子(Yuko.Ai.Nakama)




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