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感動をつくる人の原点|Season2 第15話 音楽は、呼吸する

  • 4 分前
  • 読了時間: 3分


昔、私が演出・振り付けをした、生演奏のショーでのことです。

1950年代のアメリカをイメージした、オールディーズのショーでした。


オープニングナンバー。

Big Bandの華やかな演奏が始まり、出演者たちがステージに登場します。

そして突然、

音楽が止まる。


静寂の中、一人の男性が、ジャケットの内ポケットからコームを取り出し、髪を整える。

そして、パートナーの女性へ手を差し出す。


その女性は、

「もちろん私よね。」

そんな表情で男性に近づき、その手を取ると、


「ヒューヒュー!」

周りの出演者たちから、二人をはやし立てる声が飛ぶ中、

男性が女性を抱き寄せ、

ディップ。


その瞬間、

止まっていたBig Bandの演奏が、一斉に再開!


実は、この演奏が再開するタイミングには、決められたカウントがありませんでした。


バンドリーダーは演者を見ている。


演者も、バンドの気配を感じている。


そして、

「今だ。」

その瞬間に指揮が出て、音楽が動き出す。


演者が音楽に合わせるだけではありません。

音楽も、演者を見ている。


私は、そんな生演奏のショーが大好きです。


私自身が出演者だった時代、稽古場ではピアノだけで歌ったり踊ったりすることが当たり前でした。


ピアノに合わせて何度も稽古を重ね、振付や歌を身体に入れていく。


そして、ある段階でミュージシャンとの合同リハーサルが始まります。


そこで初めて、

音楽の全貌が現れる。


ピアノ 一台だった音楽が、たくさんの楽器によって一気に広がっていく。


「あ、ここに、こんな音があったんだ。」


それまで聞こえていなかった音が、次々と聞こえてきます。


管楽器のフレーズ。

リズムのアクセント。

その音を身体で感じながら踊る。


とにかく、気持ちいい。


出演者だった私自身が、その感動を何度も味わってきました。

だから演出家・振付師になってからも、出演者たちが初めて生演奏と一緒になった時の感動は、よくわかります。


音楽とダンスが一つになった瞬間、

それまで別々に育ててきたものが、一つのショーになっていくのです。


生演奏では、同じ曲を同じメンバーで演奏していても、まったく同じ瞬間は二度とありません。

出演者が呼吸する。

ミュージシャンが、その呼吸を感じる。


そして出演者も、奏でられる音を感じ取る。


そうやって、お互いに呼吸を合わせながら、その日のショーが生まれていきます。


もちろん、作品によっては録音された音源の正確さが必要なこともあります。


どちらを選ぶかは、

その作品が何を必要としているかによって変わります。


それでも、

生演奏だからこそ生まれる、

その日、その瞬間だけの音。


人と人が互いを感じ、

呼吸を合わせることで生まれる時間。


それは、

何度繰り返しても、

まったく同じものにはなりません。


だからこそ、

生演奏は、面白い。


そして、


音楽は、呼吸する。



読んでいただき ありがとうございました。

中間裕子(Yuko.Ai.Nakama




 
 
 

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