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感動をつくる人たち|Season3 第7話 型ではなく、精神を受け継ぐ
ロングランの作品では、出演者が少しずつ入れ替わっていきます。 新しい人が入り、先輩が教える。 その人が何年か経つと、今度は後輩に教える側になる。 そうやって、作品は人から人へ受け継がれていきます。 でも、長く続けば続くほど、難しいこともあります。 「なぜ、そうするのか」 が、いつの間にか抜けてしまうことです。 まず、その時代を知る 新しい出演者が入ってきた時、まず伝えていたのは、作品の時代背景でした。 このショーで使われているのは、1930年代から1940年代にかけてのSwing Jazz。 その時代のStyleを理解してほしい。 でも、 「その時代へタイムスリップしているわけではない」 ということも伝えていました。 だから、その時代を知るために、 「『ザッツ・エンターテインメント』などの映画を観て、研究してください」 と話していました。 立ち方、座り方、手の使い方、リアクション。 振付を覚えるだけではなく、 その作品が生きている世界を知る。 まずは、そこからです。 最初は、誰かの真似でもいい 日々の現場では、ラインキャプテンや先輩たちが、とても
1 日前


感動をつくる人たち|Season3 第6話 変えるもの、残すもの
リニューアルって、難しい。 1作目が好評だった作品ほど、難しいと思います。 新しくしたのに、 「前の方が良かった。」 と言われてしまうことがある。 これは、絶対に避けたかった。 10年間ロングランを続けてきたSwing Jazzのショーを、大きくリニューアルすることになった時、私の中にはひとつの思いがありました。 絶対に、前作を上回る。 でも、不思議と不安はありませんでした。 なぜなら私は、その日をずっと待っていたからです。(笑) ずっと、やりたかったことがあった 10年間、同じ作品を上演している間にも、 「もし、いつかリニューアルできるなら……」 と考えていたことがありました。 舞台美術。 衣装。 楽曲。 やりたいことは、たくさんありました。 だから、いざリニューアルが決まった時、 「さて、何から始めよう?」 ではありません。 全部、同時です。(笑) 舞台美術も、衣装も、楽曲も。 すべて、一斉にGO! ただし、その前に決めていたことがありました。 残すものです。 変えないものを、先に決める オープニングとカーテンコール。 そして、フィナーレのタ
4 日前


感動をつくる人たち|Season3 第5話「自由」と「勝手」は違う
私は、作品の中に、出演者が自由に表現できる場所をつくることがあります。 でも、 「自由にやっていいよ」は、「何をやってもいいよ」ではありません。 決めるところは、きちんと決める。 その上で、出演者に託すところをつくる。 例えば、リハーサルで、 「はい。好きなポーズ!」 と言うことがあります。 「アクション!」 それぞれが思い思いのポーズをする。 「あ、それ、いいね!」 となれば、そのままその人のポーズとして決めることもあります。 でも、ステージでは、出演者全員のポーズが、ひとつの絵として客席から見えます。 自由にやってもらうと、偶然、同じようなポーズが重なることもある。 そんな時は、全体のバランスを見ながら調整して、最終的には一人ひとりのポーズを決めていきます。 まず、自由にやってもらう。 そこから、いいものを拾う。 そして、作品として整える。 リハーサルの中で出演者から出てきたものを活かしながら、最終的には演出として決めています。 その一方で、作品によっては、 何小節かを、出演者の自由な表現に任せることもあります。 そこは、本番でも毎回同じでな
10月12日


感動をつくる人たち|Season3 第4話 その場所にしか、つくれないショーがある。
ショーをつくるとき、作品だけを考えていればいいわけではありません。 どこで上演するのか。 私は、それも演出の一部だと思っています。 劇場やコンサートホール、ホテルの宴会場、コンベンションホールなど、多目的に使うことを前提につくられた場所では、さまざまな世界をつくることができます。 でも、ときどき、 その場所自体が、強い個性を持っていることがあります。 そんな場所に出会ったとき、私は、その場所が何を語っているのかを考えます。 その主張を消してしまうのではなく、 その場所が持つ声に、耳を傾ける。 そこから、作品づくりが始まることがあります。 土臭い場所だった 以前、ゴールドラッシュの時代を舞台にした、ミュージカル型のショーをつくったことがあります。 舞台は、金鉱を中心に人々が集まる「ゴールドタウン」と呼ばれる小さな町。 映画『掠奪された七人の花嫁』を題材にした、アメリカ西部の田舎町の物語です。 金鉱を掘る男たちのところへ、都会から女性たちがやってくる。 粗野で、女性との接し方もよく分からない男たちは、彼女たちに恋をします。 けれど、うまくいかない
10月7日


感動をつくる人たち|Season3 第3話 そのショーは、誰のために上演するのか
― 誰に、何を届けるのか ― ショーをつくる時、最初に何を考えるのか。 劇場の大きさでしょうか。 出演者の人数でしょうか。 それとも、 音楽でしょうか。 私の場合、まず考えるのは、 「クライアントが求めている世界観は、何なのか」 ということです。 そして、その世界観を、どこで上演するのか。 劇場なのか。 テーマパークなのか。 ホテルなのか。 同じ世界観でも、上演する場所が変われば、演出はまったく変わります。 同じSwing Jazzでも、場所が変われば演出は変わる 例えば、 1930〜40年代のSwing Jazzを使った、華やかなショー。 そんな依頼があったとします。 劇場なら、舞台転換を自在に使うことができます。 一方、ホテルでは、劇場と同じような舞台転換は難しい。 そして、テーマパークなら、さらに別のことを考えます。 その場所ならではの要素を、ショーの中にどう組み込むのか。 そのひとつが、そこに存在するメインキャラクターとのコラボレーションです。 Big BandによるSwing Jazzの生演奏。 シンガーによる生歌。 そして、ダンサーた
10月6日


感動をつくる人たち|Season3 第2話 舞台に描く、見えないピラミッド
大人数の出演者が、ステージにいる。 さて、皆さんなら、誰を、どこに立たせますか? 私が大人数のショーをつくる時、頭の中には、いつもひとつの「ピラミッド」があります。 もちろん、本当に三角形に並べるわけではありません。(笑) これは、私なりの「絵作り」の考え方です。 前回書いたSwing Jazzのショーには、シンガー、タップダンサー、そして大人数のダンサーが出演していました。 それぞれ役割が違います。 シンガーは、シンガー。ダンサーは、ダンサー。 誰を、どう見せるのか。 例えば、このショーの場合、基本となるピラミッドの頂点には、男女4人のシンガーがいました。 その下に、2名のスペシャルタップダンサー。 さらにその下に、少人数のコーラスを担当するシンガーダンサーがいて、少人数のダンサーがいて、その下に大人数のダンサーがいる。 でも、これは出演者の序列ではありません。 今、お客様に何を見てもらうのか。 そのためのピラミッドです。 それぞれのシーンにも、別の絵がある このショー全体のピラミッドは、基本的には最初から最後まで変わりません。 でも、ショーは
10月4日


感動をつくる人たち|Season3 第1話 なぜ、Swing Jazzは愛され続けるのか
皆さんにとって、「懐メロ」と「スタンダード」の違いって、なんですか? 私は、こんなふうに思います。 懐メロは、過去を思い出す音楽。 スタンダードは、過去から現在まで演奏され続ける音楽。 もちろん、これは私なりの捉え方です。 でも、Swing Jazzの世界に長く関わってきて、この「演奏され続ける」ということに、スタンダードという音楽の魅力があるように思うのです。 私は、ひとつのSwing Jazzのショーをつくりました。 Big Bandがステージにいて、生で演奏する。 その前でシンガーが歌い、大人数のダンサーが踊り、タップダンサーがリズムを刻む。 そこで使ったのは、1930年代、40年代を中心としたSwing Jazzの名曲たちでした。 でも私は、出演者たちに、 「1930年代、40年代へタイムスリップしているわけではない」 と伝えていました。 昔の人を演じるのではありません。 今を生きている人たちが、今、演奏し、今、歌い、今、踊っている。 あくまでも、これはライブショーだからです。 ただし、その時代のStyleは大切にしました。...
9月30日


ただ、歩く。
ノルウェー国王の国葬を見ていました。 威風堂々。 そこには、ヨーロッパの長い歴史と、受け継がれてきた伝統の重みがありました。 けれど、私の目がいちばん惹きつけられたのは、とてもシンプルなことでした。 歩くこと。 楽団や軍人たちの足並みが揃っているのは、わかります。 けれど、棺の後ろを歩く王族の方々も、歩くテンポが揃っている。歩幅が揃っている。 前の人との距離も、大きく乱れない。 誰かが大きな動きをするわけでもない。何かを表現しようとしているわけでもない。 ただ、歩いている。 それなのに、その姿を見ているうちに、 「気持ちを合わせる」「心をひとつにする」 ということが、目の前に見えてくるような気がしました。 私は長く、ショーをつくる仕事をしてきました。 踊ることも、歌うことも、演じることも、もちろん表現です。 でも、 歩くことも、表現になる。 何をするかではなく、どんな気持ちで、そこにいるのか。 同じ方向を見て、同じテンポで、ともに一歩を踏み出す。 それだけで、人の心に伝わるものがある。 何かを足さなくてもいい。大きく見せなくてもいい。 ただ、歩く
9月14日


感動をつくる人の原点|Season2 第25話 【最終回】私の原点、そして、OHANA
Season2では、この物語を書きながら、何度も自分のアルバムを開いてきました。 そして最終回に、もう一つだけ、私の演出の原点が詰まったショーのお話をしたいと思います。 あるレストランで、長い年月にわたって上演していた、ポリネシアンスタイルのディナーショーです。 このショーで、私がダンサーによく伝えていた言葉があります。 「自分の魅力を出しなさい。」 もちろん、振付はあります。 フォーメーションもあります。 みんなで揃えるところは、きちんと揃える。 でも、それだけでは、その人が踊る意味がなくなってしまいます。 特に、ロマンチックな曲を一人で踊るフラ・アウアナでは、一人ひとりが持っている個性を大切にしていました。 同じ基本となる振付を踊っていても、踊る人によって、そこに見える景色は違います。 それぞれのダンサーが、これまで学び、身につけてきたもの。 そして、その人自身が持っている個性を大切にしながら、どう踊るかはダンサーに任せていました。 一方、タヒチアンダンスでは、また違った形で個性が表れます。 ショーの中には、ダンサー同士が競い合うように踊るシ
9月13日


感動をつくる人の原点|Season2 第24話 演出家の引き出し
演出家のアイデアは、どこから生まれてくるのだろう。 あらためて考えてみると、自分の「引き出し」には、本当にいろいろなものが入っているんだろうな、と思います。 宝塚で、演じたり、観てきた舞台。 ブロードウェイやラスベガスで出会った、想像を超えるようなショー。 でも、それだけではありません。 子どもの頃に見ていた喜劇やテレビ番組。 思わず笑ってしまった場面。 音楽やダンス。 旅先で見た景色や、何気なく目にした出来事。 考えてみれば、演出家になってから「引き出し」を作り始めたわけではありません。 演出のために、何かを集めていたわけでもありません。 ただ面白くて笑ったり、驚いたり、感動したり。 そんなものが、いつの間にか、自分の中に仕舞われていたのだと思います。 だからといって、作品を創る時、 「さて、引き出しの中から何か探してみよう。」 そう考えているわけでもありません。 むしろ、アイデアは突然やってきます。 音楽の打ち合わせをしている時。 リハーサルをしている時。 お風呂に入っている時。 時には、夢の中でも。 「あっ、これだ!」 突然、何かが浮かぶ。
9月12日


感動をつくる人の原点|Season2 第23話 非日常への入口
昔、あるプロデューサーから、こんなことを言われたことがあります。 「素晴らしい作品を観に行くのと同じように、つまらないと言われている作品も観に行きなさい。」 なぜなら、 どんなに小さな作品にも、そこには必ず、それを考え、組み立てている人がいるから。 たとえば、ちょっとした式典。 華やかなショーがあるわけではなくても、そこにはたくさんの演出があります。 どんなBGMを流すのか。 客席の照明は、どのくらいの明るさにするのか。 誰が、いつ、どこから登場するのか。 一つひとつは、とても小さなことです。 でも、その積み重ねによって、 その場の空気はつくられていきます。 あの頃、そのプロデューサーの言葉を聞いた私が、わざわざ「つまらない」と言われている作品を探して観に行ったかというと…… たぶん、行っていません。(笑) でも、その言葉は、なぜかずっと心のどこかに残っていました。 そして長い間、演出という仕事を続けてきた今、その言葉の意味がよくわかります。 現在、企業の式典やパーティーを演出する時、私は舞台の上で何をするかだけを考えているわけではありません。
9月9日


感動をつくる人の原点|Season2 第22話 想像を超えた舞台
1995年頃、初めてラスベガスでショーを観た時のことを、今でもよく覚えています。 最初に観たのは、MGMグランドで上演されていた『EFX』でした。 それまでにも、日本でマジックショーを観たことはありましたが、この時、目の前で繰り広げられたマジックは、まったくスケールが違いました。 椅子やテーブルが、空中に浮かんでいく。 「えっ、どうなっているの?」 考えても、まったく分かりません。(笑) まさに、度肝を抜かれた。 ラスベガスで最初に出会ったのは、そんなショーでした。 その数年後、今度は『O』を観ました。 幕が開くと、大きな赤い布が目の前から一気に消えていく。 そして、その向こうに現れたのは、水でした。 「えっ、ここ、プールなの?」 ところが、まだ驚きは続きます。 水面には、人が潜って待っているような気配はありません。 泡も見えない。 それなのに突然、水の中から人が現れる。 「どこにいたの?」 もう、それだけで不思議でした。(笑) 通常のサーカスなら、空中演技を終えた出演者は、下に張られたネットへ飛び降ります。 ところが『O』では、そのネットがない
9月7日


感動をつくる人の原点|Season2 第21話 心を動かされた夜
一時期、ニューヨークへよく行く機会がありました。 その時は、必ず時間を作って、本場ブロードウェイの舞台を観に行っていました。 客席に座ると、どうしても演出家や振付師としての目で観てしまいます。 「この転換、面白いな。」 「この照明、どうなっているんだろう。」 これはもう、職業病のようなものです。(笑) それでも時々、そんなことを考える余裕さえなくなるほど、作品の世界に引き込まれることがありました。 1997年11月頃、まだ開幕して間もないミュージカル『ライオンキング』を観た時も、そうでした。 作品についてほとんど何も知らずに劇場へ入った私は、次々と目の前に現れる光景に、ただ圧倒されました。 客席の通路に現れる、巨大な動物のパペットたち。 劇場を包み込むように響く、生のパーカッション。 それまで見たことのない表現や、独創的な衣装。 一つひとつに驚きながら、私の頭の中にあったのは、 「こんな表現があるんだ!」 という思いでした。 そして終演後。 興奮したまま劇場を出たのですが、その時の私はニューヨークを一人で旅していました。 だから、 この感動を、誰
9月4日


感動をつくる人の原点|Season2 第20話 感動は、積み重ねの先に
前回に続いて、『ワン・マンズ・ドリーム』のお話です。 今回は、あらためて音楽に耳を傾けながら作品を見返してみました。 すると、音楽だけではなく、振付、芝居、衣装、舞台装置、照明、そして「間」。 その一つひとつが、観客の気持ちを次の場面へと導くために、実に細かく計算されていたことに気づきます。 音楽とともに、色が生まれる ショーは、『ワン・マンズ・ドリーム』のテーマソングから始まります。 お城が描かれた幕が開くと、そこに現れるのは、白黒の絵本のような世界。 ミッキーとミニーも、まだ白黒です。 ミッキーがミニーに、小さな色とりどりの花束を渡します。 ミニーがミッキーにキスをする。 すると、音楽が動き始めます。 その音楽に合わせるようにダンサーたちが次々と登場し、白黒だったミッキーとミニーが、一瞬で鮮やかなカラーの姿へと変わります。 周囲のダンサーたちの衣装も、ミッキーとミニーをイメージしたデザイン。 男性は赤いパンツに、黄色い蝶ネクタイとサスペンダー。 女性は赤と白の水玉模様のミニドレスに、黄色い靴。 衣装までが、ミッキーとミニーの世界の一部になっ
9月1日


感動をつくる人の原点|Season2 第19話 転換そのものを、ショーにする
前日に続いて、『ワン・マンズ・ドリーム』のお話です。 1988年、初めてこのショーを観た時。 次から次へと違う世界が現れていくことに、私は夢中になっていました。 そして、今でも振り返ると、印象に残っていることがたくさんあります。 その一つが、 場面と場面のつなぎ方です。 場面が変わっていく オープニングに続く『不思議の国のアリス』のシーンでは、絵が描かれた可動式のパネルが使われていました。 そのパネルを動かしながら舞台の景色を変え、そこから現れたのは、まるでアニメから抜け出してきたようなお花のダンサーたち。 出演者が登場することと、舞台の景色が変わることが、一つになっていました。 そして、『ジャングル・ブック』。 ここにも、印象的な場面転換がありました。 オープニングで、ミッキーとミニーの世界が白黒からカラーへと変わった時に使われていた、回転するパネル。 そのパネルが、いつの間にか次の場面のために準備されています。 そして反転すると、 キング・ルイが乗った、ジャングルのセットが現れる。 実は今回、昔の映像をあらためて見直してみたのですが、 「これ
8月31日


感動をつくる人の原点|Season2 第18話 30分に詰まっていたもの
前日に続いて、『ワン・マンズ・ドリーム』のお話です。 今回も、 あの30分から何を感じ、何を学んだのか。質問に答える形で振り返ってみたいと思います。 1988年。 初めてこのショーを観た時、私は30分という上演時間にも驚きました。 ――ショーの上演時間が30分と聞いて、どう感じましたか? 「短い。」 そう思いました。 それまで私が出演してきた宝塚のレビューショーは、短いものでも45分ほど。 私にとって30分という時間は、 「たった30分しか上演しないの?」 と、とても短く感じるものでした。 ところが、ショーを観終わった時の感覚は、まったく違いました。 一言で言うなら、 「お腹いっぱい。」 それなのに、 「もう一度観たい。」 満腹なのに、また食べたい。(笑) 不思議な感覚でした。 ――その30分の中には、何があったのでしょう? 本当に、いろいろな世界がありました。 オープニングでは、モノトーンだった世界が鮮やかなカラーへと変わっていく。 『不思議の国のアリス』では、バレエのテクニックをふんだんに取り入れた、アリスの美しいソロダンス。...
8月30日


感動をつくる人の原点|Season2 第17話白黒の世界に、色が生まれた瞬間
前日に続いて、『ワン・マンズ・ドリーム』のお話です。 今回は少し趣向を変えて、 あの30分から何を感じ、何を学んだのか。質問に答える形で振り返ってみたいと思います。 1988年。 東京ディズニーランドで、このショーを初めて観た時のことです。 ――最初に驚いたのは、何でしたか? 幕です。 それまで、劇場の緞帳とは、劇場ごとの顔のような存在があり、厚い素材に刺繍が施されていたり、色にも品格があったりと、私にとっての緞帳というものは、とても重厚な存在でした。 ミュージカルのOvertureが流れている時も、緞帳はそこに静かに存在している。 そんなイメージを持っていました。 ところが、『ワン・マンズ・ドリーム』では違いました。 テーマ音楽が始まると、舞台を閉じていた幕に描かれたお城が、光によってマジカルに輝き始めます。 まだ幕は開いていない。 でも、 もう何かが始まっている。 私は、その時点ですでにワクワクしていました。 ――そして、幕が開くと? そこに現れたのは、 モノトーンの世界でした。 セットも、そこに登場したミッキーもミニーも白黒。 そこでミッキ
8月29日


感動をつくる人の原点|Season2 第16話 そこまで、どう観客の気持ちを連れていくか
演出家になったばかりの頃、 私はバーネット・リッチ(Barnette Ricci)というアメリカ人演出家が手がけた、東京ディズニーランドの『ワン・マンズ・ドリーム』というショーに、とても大きな影響を受けました。 1988年のことです。 バーネットさんのリハーサルを間近で見て、演出の方法を教えていただいたわけではありません。 私が学んだのは、 完成した作品そのものでした。 それまで私は、宝塚でレビューショーに出演してきました。 短いショーでも、最低45分はありました。 ところが、『ワン・マンズ・ドリーム』は、30分ほどで完結するショーでした。 その短い時間の中で、次から次へと違う世界が現れます。 笑ったり。 ワクワクしたり。 美しさに見惚れたり。 驚いたり。 私は、すっかりその世界に引き込まれていました。 そして、今でも忘れられないシーンがあります。 フライングです。 その作品にフライングがあることは知っていました。 だから私は、 「いつ飛ぶんだろう。」 と思いながら観ていました。 でも、 なかなか飛ばない。 まだ。 まだ。 まだ……。 そして、
8月28日


感動をつくる人の原点|Season2 第15話 音楽は、呼吸する
昔、私が演出・振り付けをした、生演奏のショーでのことです。 1950年代のアメリカをイメージした、オールディーズのショーでした。 オープニングナンバー。 Big Bandの華やかな演奏が始まり、出演者たちがステージに登場します。 そして突然、 音楽が止まる。 静寂の中、一人の男性が、ジャケットの内ポケットからコームを取り出し、髪を整える。 そして、パートナーの女性へ手を差し出す。 その女性は、 「もちろん私よね。」 そんな表情で男性に近づき、その手を取ると、 「ヒューヒュー!」 周りの出演者たちから、二人をはやし立てる声が飛ぶ中、 男性が女性を抱き寄せ、 ディップ。 その瞬間、 止まっていたBig Bandの演奏が、一斉に再開! 実は、この演奏が再開するタイミングには、決められたカウントがありませんでした。 バンドリーダーは演者を見ている。 演者も、バンドの気配を感じている。 そして、 「今だ。」 その瞬間に指揮が出て、音楽が動き出す。 演者が音楽に合わせるだけではありません。 音楽も、演者を見ている。 私は、そんな生演奏のショーが大好きです。.
8月26日


感動をつくる人の原点|Season2 第14話 受け継がれていく教え
基本的に、私の振付の現場では、フォーメーションをつける前に、全員で踊る部分の振付をします。 それが終わると、いよいよフォーメーションをつける作業に入るのですが、ここで、ある演出家から言われたことがあります。 「振付師は、センターから動くな。」 最初に聞いた時は、その意味がよく分かりませんでした。 当時の私は、フォーメーションをつける時、出演者のところまで行って、 「もう少し右。」 「あなたは、あと半歩前。」 そんなふうに、一人ひとりを自分で動かしていました。 すると、その演出家から、 「そこへ行って動かすのではなく、センターから指示を出しなさい。」 と教えられたのです。 ステージには、「場ミリ」という目印を付けます。 出演者が自分の立ち位置を覚えられるように、ステージ前に等間隔の番号を付けたり、横のラインが分かるように目印を付けたりします。 リハーサルの時は、スタジオの床にその場ミリを貼って、 「Aラインの3番。」 「Bラインの2番。」 と伝えることで、出演者は自分でその場所へ移動することができます。 もしかすると、出演者のそばまで行って位置を直
8月24日
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