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感動をつくる人たち|第33話 脳内リハーサル室

  • 5月17日
  • 読了時間: 3分

最近、ダンススタジオの先生方からよく耳にする話があります。

「最近の子たちは、先生が求めている形をその場でコピーできない」


もちろん、今はスマホの時代です。

レッスンの様子を動画に撮り、後から見返して練習できる。

それ自体はとても便利なことです。

けれど、プロの現場では「後で動画を見て覚えます」が通用しない瞬間があります。


例えばオーディション。

短い時間で振り付けが入り、その数分後には音楽に合わせて踊らなければなりません。


そこで求められるのは、“その瞬間に、身体と脳へ焼き付ける力”です。


振付師の形を、一瞬でコピーできること。

手の角度、顔の向き、視線、重心、呼吸、そして音の取り方。


本当に伸びる人は、ただ動きを追うのではなく、先生の身体の中にある「感覚」までをも吸収しようとしています。


実は私自身、現役時代にこの“焼き付ける力”を鍛えるためのイメージトレーニングを編み出しました。


それは、夜、ベッドに横たわり、部屋の明かりをすべて消して無音にすることから始まります。


目を閉じ、頭の中に、練習したいシーンの音楽を流す。

次に、その音楽に合わせて映像を浮かべます。

踊っているのは自分でも、先生でも、あるいは尊敬憧れの先輩でも構いません。

このトレーニングで大切なポイントは2つ。


  • 音楽を何度も聴き込み、細部まで頭の中で再生できること

  • 振付のベースが、すでに身体に入っていること


その準備が整った上で、頭の中のスクリーンに踊りを再生していくのです。


この方法を思いついたのは、

昔、日本舞踊の試験を控えていた時でした。

それまでバレエの経験しかなかった私にとって、重心の使い方が根本から異なる日本舞踊は、なかなか身体に馴染まず苦労していました。


そこで試したのが、頭の中で動きを「連写」のように再生することでした。


上手な同期の動きを思い出し、一コマずつ、正しい形を脳内に焼き付けていく。

翌日、鏡の前で自分の身体がその形になっているかを確認する。

そしてその夜、また暗闇の中で目を閉じ、映像を浮かべる。


今度は、連写した一枚一枚の静止画を、なめらかな曲線を描くように繋げていく。

山と谷、波のように動きにメリハリをつけながらも、しなやかに流れるように繋げていくのです。


そんな風に試行錯誤を繰り返して迎えた試験当日。

自分でも驚くほど、良い成績をいただくことができました。


後から知ったことですが、これに近い手法は「メンタルトレーニング」としてトップアスリートの方々も取り入れているそうです。

私の編み出した方法は、あながち間違っていなかったようです。


こうしたトレーニングを普段から習慣にしていると、オーディション会場の廊下で待機している時間も、すぐに自分の世界へ没入できるようになります。


ただ順番を待つのではなく、頭の中ではもう、何度も本番を踊っている。

だからこそ冷静に振付を整理でき、「この振付を、自分ならどう表現するか」という一歩先の思考まで辿り着けるのです。


実は、そこで他の受験者との「差」がついているのかもしれません。


テクニックを磨くことも、スマホで動画を確認することも、もちろん大切です。

けれど、短時間で振付を脳に焼き付ける力

そして、その振付に自分の魂を込める力。


そのためのイメージトレーニングも、私はプロとして不可欠なスキルだと信じています。


プロダンサーを目指している皆さん。

騙されたと思って、一度、自分だけの「脳内リハーサル室」を訪ねてみてはいかがでしょうか。


ただし、気をつけてください。


これ、こだわり始めると、気がついたら朝になっていますから(笑)。



読んでくださってありがとうございます。  

心に残りましたら、応援いただけると嬉しいです。

中間裕子(Y.Ai.Nakama)

 
 
 

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