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感動をつくる人たち|第23話 その人でなければならない理由

  • 5月7日
  • 読了時間: 2分

目に見えない“何か”が、最後の一歩を決める。




「オーディションでは、いちばん上手い人が選ばれる」

そう思われていることが多いかもしれません。


でも現場では、少し違う視点で人を見ています。


“ うまいかどうか ”だけでは、決まらない瞬間があるからです。


もちろん、技術はとても大切です。一定のレベルに達していなければ、作品として成立しません。

けれど実際の現場には、同じように上手い人が、何人も並ぶことがあります。


その中で最後に残るのは、「いちばん上手い人」とは限らないのです。


以前、ポリネシアンダンサーのオーディションを行ったことがあります。


フラとタヒチアン、両方を踊れるダンサーを探していました。


すでに決まっていたメンバーは、ハワイから来日したダンサーたち。

そこに、日本人ダンサーを1名加えることになり、国内のハラウに声をかけて、オーディションを行いました。


技術もしっかりしていて、スタイルも美しい方は、何人もいました。


その中で、ひとりだけ。空気を変えるダンサーがいました。


フラは、手の動きで想いを伝える踊りとも言われます。

風や花の香り、星空や月の光——目には見えないものを、身体で表現していく踊りです。


彼女は、動きだけでなく、目の表情や指先のひとつひとつにまで、その世界が宿っていました。

気がつくと、その人の踊りに引き込まれ、空気がふっと変わるのを感じました。


「この人だ」と思った瞬間でした。


技術的には同じように見えても、なぜか目が離せない人がいます。

気がつくと、もう一度その人を見ている。そんな瞬間が、現場にはあります。


その感覚が、キャスティングの最後の一歩になることもあります。


オーディションは、誰かをふるいにかける場ではなく、その作品にとって必要な“ 出会い ”を探していく時間です。


その人が入ることで、どんな景色が立ち上がるのか。


どんな空気が生まれるのか。


その可能性を見つけていくことが、キャスティングなのだと思います。


誰を選ぶかではなく、誰と出会うか。


その積み重ねが、ひとつの作品になっていく。


オーディションもキャスティングも、きっと、そのはじまりの演出なのだと思います。


読んでくださってありがとうございます。 

心に残りましたら、応援いただけると嬉しいです。

中間裕子(Y.Ai.Nakama)

 
 
 

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