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感動をつくる人たち|第25話 人は、任されたときに輝きはじめる

  • 5月9日
  • 読了時間: 3分


ミュージカルやテーマパークなど、ロングランの現場では、出演者の中から「ラインキャプテン」や「ダンスキャプテン」を任命することがあります。

舞台上でのまとめ役でありながら、舞台監督と出演者をつなぐパイプ役でもあります。

現場の空気を読み、時には間に立って、問題を整理し、解決に向けていく。

だからこそ、技量だけではなく、人としての信頼や信用を得ている人に任命します。


ある年、新しいメンバーが加わり、カンパニー全体が少しずつ変わっていくタイミングがありました。


それまでラインキャプテンを務めていた出演者が退演し、新たにその役割を担う人を決める必要がありました。


候補となるメンバーは何人かいました。

ダンスの技量もあり、人間関係も安定している。

順当にいけば、その中から選ぶのが自然だったと思います。

でも、ひとりだけ、少し気になる存在がいました。


技量はある。周囲との関係も悪くない。

けれど、遅刻があったり、どこかルーズな一面が見える出演者。


ラインキャプテンとして考えるには、少し不安が残る存在でもありました。


その彼に、声をかけました。

「どう? ラインキャプテンという仕事に興味ある?」


周りには、驚きの空気もありました。

正直に言えば、賛成ばかりではなかったと思います。

本人も、すぐには答えを出さず、「一晩考えさせてください」と言いました。


翌日、彼は、やってみたい。という意思を示しました。


それから、彼の行動には変化が起きていました。


遅刻は、ぴたりと無くなり、周囲との関係も、これまで以上に滑らかになっていき、

少しずつ、周りのメンバーが彼を認めるようになり、気づけば、彼は自然と、みんなをまとめるリーダーという存在になっていました。


人は、任されたときに、変わるのかもしれません。


けれどそれは、新しい何かを手に入れた、というよりも、もともと持っていたものが、表に現れてきた、という方が近いのかもしれません。


きちんとできる人に任せることは、安心です。

でも、まだ整っていないように見える誰かに任せることには、少しの勇気が必要です。


それでも、その選択が、人の中にある力を引き出すことがある。


そしてその変化は、ひとりの中にとどまらず、チーム全体の空気を変え、自然とチームワークを強くしていくこともあります。


それは、出演者だけの話ではないのかもしれません。


舞台の上でも、裏側でも。


誰かに役割を渡すこと。


その人を信じて、任せてみること。


誰かに出番を渡すこと。


それもまた、感動をつくる人たちの仕事なのかもしれません。 読んでくださってありがとうございます。 

心に残りましたら、応援いただけると嬉しいです。

中間裕子(Y.Ai.Nakama)

 
 
 

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