感動をつくる人たち|第25話 人は、任されたときに輝きはじめる
- 5月9日
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ミュージカルやテーマパークなど、ロングランの現場では、出演者の中から「ラインキャプテン」や「ダンスキャプテン」を任命することがあります。
舞台上でのまとめ役でありながら、舞台監督と出演者をつなぐパイプ役でもあります。
現場の空気を読み、時には間に立って、問題を整理し、解決に向けていく。
だからこそ、技量だけではなく、人としての信頼や信用を得ている人に任命します。
ある年、新しいメンバーが加わり、カンパニー全体が少しずつ変わっていくタイミングがありました。
それまでラインキャプテンを務めていた出演者が退演し、新たにその役割を担う人を決める必要がありました。
候補となるメンバーは何人かいました。
ダンスの技量もあり、人間関係も安定している。
順当にいけば、その中から選ぶのが自然だったと思います。
でも、ひとりだけ、少し気になる存在がいました。
技量はある。周囲との関係も悪くない。
けれど、遅刻があったり、どこかルーズな一面が見える出演者。
ラインキャプテンとして考えるには、少し不安が残る存在でもありました。
その彼に、声をかけました。
「どう? ラインキャプテンという仕事に興味ある?」
周りには、驚きの空気もありました。
正直に言えば、賛成ばかりではなかったと思います。
本人も、すぐには答えを出さず、「一晩考えさせてください」と言いました。
翌日、彼は、やってみたい。という意思を示しました。
それから、彼の行動には変化が起きていました。
遅刻は、ぴたりと無くなり、周囲との関係も、これまで以上に滑らかになっていき、
少しずつ、周りのメンバーが彼を認めるようになり、気づけば、彼は自然と、みんなをまとめるリーダーという存在になっていました。
人は、任されたときに、変わるのかもしれません。
けれどそれは、新しい何かを手に入れた、というよりも、もともと持っていたものが、表に現れてきた、という方が近いのかもしれません。
きちんとできる人に任せることは、安心です。
でも、まだ整っていないように見える誰かに任せることには、少しの勇気が必要です。
それでも、その選択が、人の中にある力を引き出すことがある。
そしてその変化は、ひとりの中にとどまらず、チーム全体の空気を変え、自然とチームワークを強くしていくこともあります。
それは、出演者だけの話ではないのかもしれません。
舞台の上でも、裏側でも。
誰かに役割を渡すこと。
その人を信じて、任せてみること。
誰かに出番を渡すこと。
それもまた、感動をつくる人たちの仕事なのかもしれません。 読んでくださってありがとうございます。
心に残りましたら、応援いただけると嬉しいです。
中間裕子(Y.Ai.Nakama)




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