感動をつくる人の原点|Season2 第18話 30分に詰まっていたもの

前日に続いて、『ワン・マンズ・ドリーム』のお話です。
今回も、
あの30分から何を感じ、何を学んだのか。質問に答える形で振り返ってみたいと思います。
1988年。
初めてこのショーを観た時、私は30分という上演時間にも驚きました。
――ショーの上演時間が30分と聞いて、どう感じましたか?
「短い。」
そう思いました。
それまで私が出演してきた宝塚のレビューショーは、短いものでも45分ほど。
私にとって30分という時間は、
「たった30分しか上演しないの?」
と、とても短く感じるものでした。
ところが、ショーを観終わった時の感覚は、まったく違いました。
一言で言うなら、
「お腹いっぱい。」
それなのに、
「もう一度観たい。」
満腹なのに、また食べたい。(笑)
不思議な感覚でした。
――その30分の中には、何があったのでしょう?
本当に、いろいろな世界がありました。
オープニングでは、モノトーンだった世界が鮮やかなカラーへと変わっていく。
『不思議の国のアリス』では、バレエのテクニックをふんだんに取り入れた、アリスの美しいソロダンス。
猫や犬に扮したダンサーたちの、テクニカルなダンス。
『ジャングル・ブック』では、たくさんのモンキーたちが登場する楽しいシーン。
そして『ピーター・パン』では、海賊たちとのアクションから、ピーターパンとウェンディが空へ舞い上がるフライングへ。
そこから、空気は一変します。
プリンセスとプリンスたちが登場し、舞台はロマンティックな世界へ。
白雪姫。オーロラ姫。そして、シンデレラ。
やがて舞台は、優雅なボールルームへと広がっていきます。
ロマンティックで、美しい世界。
ところが、その余韻に浸っていると――
今度は、笑いがやってきます。
ドナルド扮する、『白鳥の湖』の4羽の白鳥。
グーフィー扮する、マタドール。
ミッキー扮する、ハムレット。
美しい。
楽しい。
ハラハラする。
ロマンティック。
そして、笑う。
一つの感情に慣れる前に、次の世界がやってくるのです。
――だから、30分なのに短く感じなかった?
そうなのだと思います。
そして最後は、ハリウッド。
レッドカーペットに、スターとしてディズニーキャラクターたちが次々と登場し、舞台は一気に華やかなショーの世界へ。
そこからフィナーレへ向かって、エネルギーがどんどん大きくなっていきます。
振り返ってみると、30分の中に詰め込まれていたのは、
たくさんの「場面」だけではありませんでした。
たくさんの「感情」だったのだと思います。
次は何が起こるんだろう。
笑ったり。
驚いたり。
うっとりしたり。
ワクワクしたり。
30分とは思えないほど、たくさんの感情を味わっている。
なのに、時間はあっという間に過ぎていきました。
気がつけば、
「もう終わっちゃった。」
そして、
「もう一度観たい。」
――その感覚は、その後のショーづくりにもつながりましたか?
つながっていると思います。
その後、私自身も30分ほどの作品を数多く創るようになりました。
その時に考えていたのは、
「何曲入れるか。」
「何場面つくるか。」
だけではありません。
お客様の気持ちを、30分間どう動かしていくのか。
楽しい場面が続くだけでは、やがてその「楽しい」にも慣れてしまう。
美しい場面が続くだけでも同じです。
違う色を入れる。
違うテンポを入れる。
そして、
違う感情を入れる。
そうすることで、一つひとつのシーンが、より鮮やかに見えてくる。
1988年。
客席でただ夢中になって観ていた、あの30分。
あの時は、
「お腹いっぱい。でも、また観たい。」
としか思っていませんでした。
でも今、振り返ってみるとわかります。
あの30分に詰まっていたもの。
それは、
たくさんの場面ではなく、
観客の心を何度も動かす、たくさんの感情だったのだと思います。
そして、それもまた、
後の私のショーづくりにつながっていった、大切な原点の一つです。
読んでいただき ありがとうございました。
中間裕子(Yuko.Ai.Nakama)




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