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感動をつくる人の原点|Season2 第19話 転換そのものを、ショーにする

8月31日
読了時間: 4分


前日に続いて、『ワン・マンズ・ドリーム』のお話です。

1988年、初めてこのショーを観た時。

次から次へと違う世界が現れていくことに、私は夢中になっていました。

そして、今でも振り返ると、印象に残っていることがたくさんあります。


その一つが、

場面と場面のつなぎ方です。

場面が変わっていく


オープニングに続く『不思議の国のアリス』のシーンでは、絵が描かれた可動式のパネルが使われていました。


そのパネルを動かしながら舞台の景色を変え、そこから現れたのは、まるでアニメから抜け出してきたようなお花のダンサーたち。


出演者が登場することと、舞台の景色が変わることが、一つになっていました。


そして、『ジャングル・ブック』。

ここにも、印象的な場面転換がありました。


オープニングで、ミッキーとミニーの世界が白黒からカラーへと変わった時に使われていた、回転するパネル。

そのパネルが、いつの間にか次の場面のために準備されています。

そして反転すると、

キング・ルイが乗った、ジャングルのセットが現れる。


実は今回、昔の映像をあらためて見直してみたのですが、

「これ、いつの間に変わったんだろう?」

今見ても、よくわかりません。(笑)

それほど自然に、観客に気づかれないところで、次の世界への準備が進められていたのです。


そして、たくさんのモンキーたちが登場し、

気がつけば、

舞台は『ジャングル・ブック』の世界になっている。


さらにショーは、『ピーター・パン』の世界へ。


海賊たちとのアクションが繰り広げられ、やがてピーターパンとウェンディが空へ舞い上がります。

観客の視線が二人を追いかけている間に、舞台にあった海賊船はなくなっていく。

そして気がつけば、二人の後ろに広がっているのは、

星空です。



見せる転換、見せない転換


このシーンの最後に幕が閉じると、すぐにプリンセスたちのシーンへと変わります。


幕の中央だけが開き、

白雪姫とプリンスが登場して、舞台の下手へ。


続いてオーロラ姫とプリンスが登場して、上手へ。


そして、シンデレラとプリンスが中央に。


再び幕が閉じる。


その幕の前で、3組のプリンセスとプリンスが美しく踊る。


その幕の向こうでは、次の舞台への転換が行われています。

そして、もう一度幕が開くと、

そこには、ボールルームが完成している。

転換しているところを見せる時もあれば、

観客の視線を別の場所へ導き、その間に転換してしまうこともある。

どちらにも共通していたのは、

場面と場面の間で、観客の気持ちを止めないことでした。



私の中にあったもの


ただ、このような転換の考え方を、私は『ワン・マンズ・ドリーム』で初めて知ったわけではありません。


宝塚の舞台にも、昔からさまざまな転換の工夫がありました。


幕の後ろで次の舞台を準備している間も、幕の前では芝居や歌が続いている。

銀橋を使っている間に転換が行われ、本舞台へ戻る頃には、もう次の世界が出来上がっている。


私自身、出演者として、そうした舞台の中で育ってきました。


だから後に自分がショーを創るようになった時も、

出演者が登場しながら、小道具や舞台装置を動かす。

その動きを振付の中に組み込む。

観客の視線が別のところにある間に、次の準備をする。

そんな演出を、自然に使うようになっていました。


以前、宝塚の先輩が私の作品を観て、

「これ、アイちゃんの演出だって、すぐわかったよ。転換のタイミングとか、宝塚っぽかった。」

と言ってくださったことがあります。


その時、

自分の中には、宝塚で身についた舞台の感覚が、ちゃんと残っているのだと思いました。


そして、『ワン・マンズ・ドリーム』を観た時に心を動かされた転換の数々も、また違う形で、私の中に残っているのだと思います。


どこか一つの作品から学んだということではなく、

これまで観てきた舞台。


出演してきた舞台。


心を動かされた作品。


そうしたものが少しずつ重なりながら、

自分の演出になっていく。


1988年。

客席で夢中になって観ていた、一つひとつの場面転換。

あの作品を観て、あらためて感じたことがあります。


転換は、次の場面へ行くためだけの時間ではない。


そこにも、

観客を楽しませる演出がある。


そして、

場面が変わっても、観客の心は途切れさせない。


それもまた、

私がショーを創る時に大切にしてきたことの一つです。





読んでいただき ありがとうございました。

中間裕子(Yuko Ai  Nakama


 
 
 

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