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感動をつくる人の原点|Season2 第23話 非日常への入口 

9月9日
読了時間: 3分




昔、あるプロデューサーから、こんなことを言われたことがあります。


「素晴らしい作品を観に行くのと同じように、つまらないと言われている作品も観に行きなさい。」


なぜなら、

どんなに小さな作品にも、そこには必ず、それを考え、組み立てている人がいるから。


たとえば、ちょっとした式典。

華やかなショーがあるわけではなくても、そこにはたくさんの演出があります。


どんなBGMを流すのか。

客席の照明は、どのくらいの明るさにするのか。

誰が、いつ、どこから登場するのか。


一つひとつは、とても小さなことです。


でも、その積み重ねによって、 その場の空気はつくられていきます。 


あの頃、そのプロデューサーの言葉を聞いた私が、わざわざ「つまらない」と言われている作品を探して観に行ったかというと……

たぶん、行っていません。(笑)


でも、その言葉は、なぜかずっと心のどこかに残っていました。


そして長い間、演出という仕事を続けてきた今、その言葉の意味がよくわかります。


現在、企業の式典やパーティーを演出する時、私は舞台の上で何をするかだけを考えているわけではありません。


お客様が会場に入ってきた時に、何を感じるのか。


それも、演出の一部だと考えています。


格式のある式典なのか。

表彰式なのか。

親睦を深めるパーティーなのか。

誰かを祝うためのパーティーなのか。


その目的によって、つくる世界は変わります。


たとえば、明るく華やかな式典なら、シンガーとダンサーによるオープニングナンバーから始め、一気にお客様を非日常の世界へ誘うことがあります。


一方で、まったく違う方法もあります。


会場のドアが開いた瞬間から、生演奏でお客様を迎える。


お客様は音楽に包まれながら会場へ入り、歓談を楽しむ。


そうしているうちに、自然とその場の空気が出来上がっていく。


改めて「ここから始まります」と告げなくても、気がつけば、もうその世界は始まっている。


非日常への入口は、一つではないのです。

 

私は、ウォルト・ディズニーが創り出した世界からも、演出について大切なことを学びました。


お客様が一歩足を踏み入れた瞬間から、もうそこには別の世界が広がっている。


「ここから非日常ですよ。」

と説明する必要はありません。


音楽があり、

景色があり、

そこにいる人たちがいて、

気がつけば、その世界の中にいる。


私は、この考え方が大好きです。


そして、それはテーマパークだけの話ではないと思っています。


劇場でも。

式典でも。

パーティーでも。


規模の大小にかかわらず、

お客様がその場所へ入った瞬間から、演出は始まっている。 


もちろん、そのために裏側では細かなところまで考えます。


でも、

お客様に、その計算を感じてほしいわけではありません。


会場に入った時、

「なんか、いい感じ。」

そう感じてもらえたら、それでいい。


そして、いつの間にか、

気がついたら笑っていた。

気がついたらワクワクしていた。

気がついたら涙が出ていた。


私は、そんな時間をつくりたいと思っています。


お客様が自然にその世界へ入り、ほんのひととき日常を忘れて、その時間を楽しんでくださる。


その入口をつくることも、演出家の大切な仕事なのだと思います。




読んでいただき ありがとうございました。

中間裕子(Yuko.Ai.Nakama)

 
 
 

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