感動をつくる人の原点|Season2 第16話 そこまで、どう観客の気持ちを連れていくか
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演出家になったばかりの頃、
私はバーネット・リッチ(Barnette Ricci)というアメリカ人演出家が手がけた、東京ディズニーランドの『ワン・マンズ・ドリーム』というショーに、とても大きな影響を受けました。
1988年のことです。
バーネットさんのリハーサルを間近で見て、演出の方法を教えていただいたわけではありません。
私が学んだのは、
完成した作品そのものでした。
それまで私は、宝塚でレビューショーに出演してきました。
短いショーでも、最低45分はありました。
ところが、『ワン・マンズ・ドリーム』は、30分ほどで完結するショーでした。
その短い時間の中で、次から次へと違う世界が現れます。
笑ったり。
ワクワクしたり。
美しさに見惚れたり。
驚いたり。
私は、すっかりその世界に引き込まれていました。
そして、今でも忘れられないシーンがあります。
フライングです。
その作品にフライングがあることは知っていました。
だから私は、
「いつ飛ぶんだろう。」
と思いながら観ていました。
でも、
なかなか飛ばない。
まだ。
まだ。
まだ……。
そして、
飛ぶ。
その瞬間、
全身に鳥肌が立ちました。
当時の私は、
なぜ、あれほど感動したのか。
もちろん、そんなことを分析しながら観ていたわけではありません。
ただ、
「うわぁ……。」
でした。
でも後になって、自分がたくさんの作品を創るようになってから、その時の感動の理由が少しずつわかってきました。
感動したのは、
飛んだからだけではない。
そこまでの持っていき方だったのです。
その瞬間まで、
どこまで期待を積み重ねるのか。
どこまで待つのか。
そして、
どこで解放するのか。
「まだ見せない。」
という時間も、演出なのです。
当時の私は、その作品を分析しながら観ていたわけではありません。
何も身構えることなく、
笑い、
ワクワクし、
そして感動していました。
先に、心が動いた。
なぜ心が動いたのかを知ったのは、後になって、自分が作品を創るようになってからでした。
そして気がつけば、
私自身もショーを創る時、
「ここで何を見せるか。」
だけではなく、
「そこまで、お客様の気持ちをどう連れていくか。」
を考えるようになっていました。
1988年。
客席で夢中になって観ていた、あの30分。
あの作品は、間違いなく、
私のレビューショーづくりの原点の一つです。
感動は、
大きな仕掛けがあるから生まれるのではない。
大切なのは、
何を見せるかだけではなく、
そこまで、どう観客の気持ちを連れていくか。
私は今も、
その「持っていき方」を考えながら、
一つひとつのシーンをつないでいます。
読んでいただき ありがとうございました。
中間裕子(Yuko.Ai.Nakama)




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