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感動をつくる人の原点|Season2 第16話 そこまで、どう観客の気持ちを連れていくか

  • 7 分前
  • 読了時間: 3分

演出家になったばかりの頃、

私はバーネット・リッチ(Barnette Ricci)というアメリカ人演出家が手がけた、東京ディズニーランドの『ワン・マンズ・ドリーム』というショーに、とても大きな影響を受けました。


1988年のことです。


バーネットさんのリハーサルを間近で見て、演出の方法を教えていただいたわけではありません。

私が学んだのは、

完成した作品そのものでした。

それまで私は、宝塚でレビューショーに出演してきました。

短いショーでも、最低45分はありました。


ところが、『ワン・マンズ・ドリーム』は、30分ほどで完結するショーでした。


その短い時間の中で、次から次へと違う世界が現れます。


笑ったり。

ワクワクしたり。

美しさに見惚れたり。

驚いたり。


私は、すっかりその世界に引き込まれていました。


そして、今でも忘れられないシーンがあります。


フライングです。


その作品にフライングがあることは知っていました。


だから私は、

「いつ飛ぶんだろう。」

と思いながら観ていました。


でも、

なかなか飛ばない。


まだ。


まだ。


まだ……。


そして、

飛ぶ。


その瞬間、

全身に鳥肌が立ちました。


当時の私は、

なぜ、あれほど感動したのか。

もちろん、そんなことを分析しながら観ていたわけではありません。


ただ、

「うわぁ……。」

でした。


でも後になって、自分がたくさんの作品を創るようになってから、その時の感動の理由が少しずつわかってきました。


感動したのは、

飛んだからだけではない。


そこまでの持っていき方だったのです。


その瞬間まで、

どこまで期待を積み重ねるのか。


どこまで待つのか。


そして、

どこで解放するのか。


「まだ見せない。」

という時間も、演出なのです。


当時の私は、その作品を分析しながら観ていたわけではありません。


何も身構えることなく、

笑い、

ワクワクし、

そして感動していました。


先に、心が動いた。


なぜ心が動いたのかを知ったのは、後になって、自分が作品を創るようになってからでした。


そして気がつけば、

私自身もショーを創る時、

「ここで何を見せるか。」

だけではなく、

「そこまで、お客様の気持ちをどう連れていくか。」

を考えるようになっていました。


1988年。

客席で夢中になって観ていた、あの30分。


あの作品は、間違いなく、

私のレビューショーづくりの原点の一つです。


感動は、

大きな仕掛けがあるから生まれるのではない。


大切なのは、

何を見せるかだけではなく、

そこまで、どう観客の気持ちを連れていくか。


私は今も、

その「持っていき方」を考えながら、

一つひとつのシーンをつないでいます。

読んでいただき ありがとうございました。 

中間裕子(Yuko.Ai.Nakama




 
 
 

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