感動をつくる人たち|Season3 第2話 舞台に描く、見えないピラミッド

大人数の出演者が、ステージにいる。
さて、皆さんなら、誰を、どこに立たせますか?
私が大人数のショーをつくる時、頭の中には、いつもひとつの「ピラミッド」があります。
もちろん、本当に三角形に並べるわけではありません。(笑)
これは、私なりの「絵作り」の考え方です。
前回書いたSwing Jazzのショーには、シンガー、タップダンサー、そして大人数のダンサーが出演していました。
それぞれ役割が違います。
シンガーは、シンガー。ダンサーは、ダンサー。
誰を、どう見せるのか。
例えば、このショーの場合、基本となるピラミッドの頂点には、男女4人のシンガーがいました。
その下に、2名のスペシャルタップダンサー。
さらにその下に、少人数のコーラスを担当するシンガーダンサーがいて、少人数のダンサーがいて、その下に大人数のダンサーがいる。
でも、これは出演者の序列ではありません。
今、お客様に何を見てもらうのか。
そのためのピラミッドです。
それぞれのシーンにも、別の絵がある
このショー全体のピラミッドは、基本的には最初から最後まで変わりません。
でも、ショーは一枚の絵ではありません。
それぞれのシーンの中にも、そのシーンならではの絵があります。
シンガーを中心に見せるシーンもあれば、その曲の途中にダンスブレイクがあれば、その瞬間はダンサーを中心としたピラミッドになることもあります。
一方で、誰か一人を頂点にしないシーンもあります。
例えば、大人数が何列にも並び、ほとんどフォーメーションを変えずに踊るシーン。
その場合でも、前列に誰を置くのか、出演者それぞれにどんな役割があるのか。
そこには、フォーメーションとは別の意味でのピラミッドが存在することもあります。
つまり、私の言う「ピラミッド」は、フォーメーションそのものではありません。
今、誰を見せるのか。何を見せるのか。そして、全体をどう見せるのか。
作品によって、シーンによって、その答えはまったく違います。
それが、私にとっての「絵作り」です。
観客の視線を、どう導くのか
では、「今、ここを見てほしい」と思った時、どうやってそれをお客様に伝えるのか。
方法は、ひとつではありません。
例えば、フォーメーションの中に高低差をつける。
見せたい人だけを立たせて、他の人を座らせる。
見せたい人だけを動かして、周りの人をストップモーションにする。
もし、見せたい人がセンターではなく、舞台の端にいても、周りが止まり、その人だけが動いていれば、自然とそこに目がいきます。
照明の力を借りることもあります。
衣装も、一人だけ色が違う。デザインが違う。
それだけでも、観客の視線を自然に導くことができます。
つまり、
「この人を見せたいから、センターに立たせる」
という単純なことではありません。
高さを変える。動きと静止をつくる。光を当てる。衣装で違いを見せる。
いくつもの方法を使いながら、今、この瞬間、お客様に何を見てもらいたいのか。
それを客席に伝えていく。
それも、私にとっての「絵作り」です。
絵作りは、もっと前から始まっている
ここまで、ピラミッドやフォーメーションについて書いてきました。
でも、この「絵作り」は、出演者をリハーサルスタジオのフロアーに立たせてから始まるものではありません。
もっと、もっと、ずっと前。
音楽制作で、アレンジャーさんと打ち合わせをする頃には、私の頭の中には、すでにある程度の舞台の絵と、時間軸が見えています。
この記事の最初に、皆さんにこんな質問をしました。
「誰を、どこに立たせますか?」
でも、演出家が考えているのは、その答えだけではありません。
誰を見せたいのか。何を見せたいのか。そして、それを客席からどう見せたいのか。
そのために、人を配置し、高低差をつくり、動かしたり、止めたり、照明や衣装の力も借りる。
そうやって、頭の中にある絵を、少しずつ現実の舞台にしていきます。
私が大人数のショーをつくる時、その設計図のひとつとして頭の中にあるのが、
「見えないピラミッド」
です。
瞬間、瞬間に舞台に生まれる一枚の絵。
その中に隠れた「見えないピラミッド」が、お客様の視線を導き、そして、いつの間にか心まで動かしていく。
見せたいものを、見せたい瞬間に届ける。
それが、演出という仕事なのだと思います。
読んでいただき ありがとうございました。
中間裕子(Yuko.Ai.Nakama)






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