感動をつくる人たち|Season3 第7話 型ではなく、精神を受け継ぐ

ロングランの作品では、出演者が少しずつ入れ替わっていきます。
新しい人が入り、先輩が教える。
その人が何年か経つと、今度は後輩に教える側になる。
そうやって、作品は人から人へ受け継がれていきます。
でも、長く続けば続くほど、難しいこともあります。
「なぜ、そうするのか」
が、いつの間にか抜けてしまうことです。
まず、その時代を知る
新しい出演者が入ってきた時、まず伝えていたのは、作品の時代背景でした。
このショーで使われているのは、1930年代から1940年代にかけてのSwing Jazz。 その時代のStyleを理解してほしい。
でも、
「その時代へタイムスリップしているわけではない」
ということも伝えていました。
だから、その時代を知るために、
「『ザッツ・エンターテインメント』などの映画を観て、研究してください」
と話していました。
立ち方、座り方、手の使い方、リアクション。 振付を覚えるだけではなく、
その作品が生きている世界を知る。
まずは、そこからです。
最初は、誰かの真似でもいい
日々の現場では、ラインキャプテンや先輩たちが、とても丁寧に新人を育ててくれていました。
自由な演技の部分では、 先輩のAさんが新人に「私は、ここはこんな感じでやっているけど、Bちゃんはこうやっているわよ」
などとアドバイスしていました。
「これが正解だから、この通りにやって」
ではありません。
決まっていることは、きちんと伝える。
でも、自由に表現していいところでは、いくつかのやり方がある。
新人の中には、「自由にやっていいよ」と言われても、どうしたらいいのかわからない人もいます。
まだ、自分の中に引き出しがないからです。
そんな時、私は、
「最初は、誰かの真似でもいいわよ」
と伝えていました。
まずは、やってみる。
そして日々 舞台を重ねながら、
少しずつ、自分の芝居を見つけていけばいい。
形を整え、意図を確かめる
定期的に行う振付や演技を整えるクリーンアップのリハーサルも、大切な時間でした。
ダンスの癖や振付については、振付師が直していきます。 私は全体を監修しながら、演出意図がきちんと受け継がれているかを確認する。
クリーンアップは、形を整えるだけではなく、
作品の意図を、もう一度確認する時間でもありました。
自分で見る。自分で気づく。
この現場には、出演者が自分たちの本番映像を見て、学ぶ文化がありました。
それは、この作品が始まる前から受け継がれていたようです。
私が「毎回、映像を見なさい」と言ったわけではありません。
それでも出演者たちは、自分の踊りや芝居を確認するために、本番映像をかなり真剣に見ていました。
自分で見る。自分で気づく。そして、次の舞台へ持っていく。
振付や芝居だけではなく、
作品に向き合う姿勢そのものが、受け継がれていた。
私は、そう思います。
19年と2か月。
その間に、出演者は何度も入れ替わりました。
作品もリニューアルを重ね、時代とともに姿を変えてきました。
でも、その根底にあるコンセプトは、変わりませんでした。
守るべきものは守る。
その理由も、きちんと伝える。
そして、その中で、新しい出演者は自分自身の表現を見つけていく。
同じ「形」をコピーし続けることが、継承ではない。
型を継承するのではなく、作品の精神を継承する。
私は、それがロングラン作品を支えるもののひとつだったと思っています。 最後まで読んでくださって、ありがとうございます。
中間裕子(Yuko.Ai.Nakama)






コメント