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感動をつくる人たち|Season3 第6話 変えるもの、残すもの

4 日前
読了時間: 5分

リニューアルって、難しい。

1作目が好評だった作品ほど、難しいと思います。

新しくしたのに、

「前の方が良かった。」

と言われてしまうことがある。

これは、絶対に避けたかった。

10年間ロングランを続けてきたSwing Jazzのショーを、大きくリニューアルすることになった時、私の中にはひとつの思いがありました。

絶対に、前作を上回る。

でも、不思議と不安はありませんでした。

なぜなら私は、その日をずっと待っていたからです。(笑)

ずっと、やりたかったことがあった

10年間、同じ作品を上演している間にも、

「もし、いつかリニューアルできるなら……」

と考えていたことがありました。

舞台美術。

衣装。

楽曲。 やりたいことは、たくさんありました。

だから、いざリニューアルが決まった時、

「さて、何から始めよう?」

ではありません。

全部、同時です。(笑) 舞台美術も、衣装も、楽曲も。

すべて、一斉にGO!

ただし、その前に決めていたことがありました。

残すものです。

変えないものを、先に決める

オープニングとカーテンコール。

そして、フィナーレのタップステップ。

この三つは、絶対に残すと決めていました。

『It Don't Mean a Thing』。

日本では『スウィングしなけりゃ意味がない』などのタイトルでも知られている曲です。

この曲は、私にとって、この作品のテーマそのもの。

この曲で始まり、この曲で幕を下ろす。

そこは変えたくありませんでした。

そしてフィナーレ。

これも、すでに作品の顔になっていました。

大勢の出演者が一緒に踏むタップステップも、外したくない。

だから、

ここは残す。

そして――

それ以外は、全部新しくする。

そんな気持ちで、新しい制作を始めました。

幕が上がった瞬間に

舞台美術で、ずっと変えたいと思っていたのが、ステージ上のBig Bandのエリアでした。

もっと高低差をつけたい。

そして何より、

バンドと出演者を、もっと一体に見せたい。

以前、クリスマスの時期にセンター階段を置いたことがありました。

その階段があることで、絵作りに大きな広がりが生まれました。 だから、

「いつか、このセンター階段を常設の舞台美術にしたい」

そう思っていました。

リニューアルでは、そのセンター階段を取り入れ、電飾も加えました。

バンドメンバーが階段上へ出たり、ステージとバンドエリアを行き来したりすることもできる。

もちろん、何かを変えれば制約も生まれます。

階段を置いたことで、ステージの奥行きは少し狭くなりました。

でも、その分、新しくできることが増えました。

そして何より、

緞帳が上がった瞬間に、「あ、変わった」と感じてもらいたかった。

舞台美術は、ただ背景を新しくするためのものではありません。

そこで、人がどう動き、どう見えるのか。

そこまで含めて、舞台の景色を変えたかったのです。

衣装で、人を描く


衣装も、随分と変えました。

新しい構成には、ダンスホールへ出掛けていく、という流れがありました。

これから出掛けていくお客さん。

そして、ダンスホールに集まる人たち。

そのために、新しい衣装をデザインしてもらいました。

また、あるシーンでは、それまでのカラフルな世界から一転して、女性たちの衣装をモノクロに。

ガラッとシックな景色に変わります。

そして、衣装は全員同じデザインではありません。

一人一人、違う。

なぜなら、そこにいる人たちは「群舞」ではなかったからです。

一人一人に個性がある。

だから、それぞれの人に合う衣装を、一点一点デザインしてもらいました。

衣装を新しくしたかった、というより、

舞台にいる人たちの見え方を変えたかった。

その方が、私の思いに近いかもしれません。

「演奏したい曲、あるよね?」

もちろん、音楽も大きく変えました。

その時、私は何人かのバンドメンバーに声をかけました。

場所は――居酒屋です。(笑)

「演奏したい曲、あるよね?」

聞いてみると、いろいろな曲が出てきました。

でも面白いことに、そのほとんどが、私自身候補として考えていた曲でした。

だから、新しい構成はとてもスムーズに組み上がっていきました。

毎日このステージで演奏している人たちが、

「この曲を演奏したい」

と思う。

そして、私も、

「この曲を使いたい」

と思っている。

その感覚が重なったことは、とても嬉しいことでした。

「よし、前作を超えた」

舞台美術も走っている。

衣装も走っている。

楽曲も走っている。

すべてが同時に進んでいた、ある日。

音楽アレンジャーから、デモ音源が届きました。

それを聴いた時、

「よし、前作を超えた。」

そう思えたことを、今でもはっきり覚えています。

まだ舞台の上に、すべてが揃っていたわけではありません。

でも、その音を聴きながら、これから出来上がる新しい舞台が見えたのだと思います。

リニューアルというと、

「何を新しくするか」

を考えがちです。

でも私は、それと同じくらい、

何を残すのか

が大切だと思っています。

全部変えてしまえば、別の作品になる。

でも、少し手を加えるだけでは、私が目指すリニューアルにはならない。

作品の核になるものは残す。

そして、それ以外は思い切って変える。

私がやったのは、古くなったものを新しくすることではありませんでした。

大切なものを残しながら、もう一度、その作品と向き合う。

リニューアルとは、

「変えるもの」と「残すもの」を決めること。

それも、演出家の仕事なのだと思います。

読んでいただき ありがとうございました。 中間裕子(Yuko.Ai.Nakama)

 
 
 

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