感動をつくる人たち|Season3 第11話 演出の仕事に、大きいも小さいもない感動をつくる人たち

ある企業の式典で、私は華やかなオープニングを提案したことがあります。
生演奏に合わせて、シンガーとダンサーが登場する。
まるでアカデミー賞の授賞式のような幕開けです。
社長の登場には、生演奏によるファンファーレも用意しました。
「そんなことが出来るのですか?」
クライアントの方は、最初、とても驚かれていました。
もともと式典の最後にミニショーを依頼されていたので、シンガー、ダンサー、ミュージシャンといった出演者だけでなく、ショーのための照明や音響も用意されることになっていました。
それなら、その力を式典のオープニングから生かせないだろうか。
ホテルの式典では、会場の天井に設置された常設スピーカーを使うこともあります。
でも、今回はミニショーのために、生演奏や歌に対応できる音響設備と、ショー用の照明を別途用意することが決まっていました。
それなら、式典のオープニングから、それらを生かすことができます。
さらに、オープニングに登場したダンサーたちに、その後の表彰式でも活躍してもらうことを提案しました。
受賞者を舞台へ誘導し、賞品の授与をサポートする。
ダンサーならではの美しい所作を生かせば、式典の進行もスムーズになります。
ショーのために用意した出演者や設備を、式典全体にも生かす。
華やかなオープニングをつくることと、式典を滞りなく進めること。
その二つを、別々に考える必要はありません。
華やかな演出を支えるもの
こうした式典では、華やかなオープニングだけを考えていればよいわけではありません。
司会者が何を話すのか。
その言葉に合わせて、誰が、どこから登場するのか。
受賞される方は、どのルートを通って登壇するのか。
贈呈者と受賞者の立ち位置。
それをサポートする人。
それぞれの動きが自然につながって、初めて式典はスムーズに進行します。
私は司会台本を書くときにも、こうした出演者やアテンダントの動きを細かく書き込みます。
音楽がある場合は音楽のリハーサルを行い、スタジオで全体の流れを確認することもあります。
本番会場に入る前に、必要な段取りを確認しておくことは、とても重要だと思っています。
本番の会場では、限られた時間の中で準備を進めなければならないからです。
華やかな舞台をつくることと、その舞台を成立させるための準備。
どちらも、私にとっては演出の仕事です。
40年ほど前の式典
思い返せば、30〜40年ほど前。
私は、企業がテーマパークの会場を貸し切って行う式典を、毎週のように演出していました。
企業が従業員とそのご家族を招待して行う式典では、代表者のご挨拶や抽選会があり、キャラクターたちも登場して、お客様と一緒に楽しい時間を過ごす。
そんな式典でした。
それぞれの企業によって式典の内容は異なりましたので、私にとって、とても演出の勉強になる現場のひとつでした。
お客様を迎える音楽。
会場の照明。
登壇者のためのマイクの高さ。
スタンドマイクに飾る花の位置。
登壇者が歩くルートや階段。
司会者の台詞と、それに合わせて動く出演者たち。
一つひとつ確認しながら、全体の流れをつくっていきます。
抽選会も、どうすればお客様が楽しみながら参加できるだろうかと考えて、当選番号の発表方法を工夫したり、出演者たちの動きを考えたり、賞品を受け取る方法や順番を考えたり。
ステージ上の華やかな演出だけでなく、こうした細かな段取りを考えることも、私にとっては式典演出の楽しい仕事でした。
大切なのは、何をどう見せるか
式典には、華やかなショーとは違う難しさと面白さがあります。
主役は、必ずしも舞台に立つ出演者ではありません。
企業の代表者であったり、表彰される社員の方であったり、参加されるお客様であったりします。
その方たちが、気持ちよく舞台に立ち、自然に動けるようにする。
そして、会場のお客様にも、その時間を一緒に楽しんでいただく。
そのために、音楽と照明を使って華やかにすることもあれば、反対に、何も加えず、シンプルに進めた方がよい場面もあります。
大切なのは、クライアントがこの式典に何を求めているのか。
そして、その思いを、参加されたお客様にどう伝えるお手伝いができるのか。
私は、そこを大切にしています。
演出の仕事に、大きいも小さいもない
私は、式典の仕事を経験してから、大きなショーの演出をするようになったわけではありません。
大きなショーをつくりながら、式典の演出もしてきました。
そして、それは今も変わりません。
大勢の出演者が登場する華やかなショーもあれば、数人の登壇者だけで進行する式典もあります。
使える時間も、予算も、会場の条件も違います。
でも、演出家として考えることの基本は同じです。
誰のために、何を伝えたいのか。
そのために、何を見せ、どう進めるのか。
そして、関わる人たちが、それぞれの役割を十分に果たせるようにするには、何が必要なのか。
華やかな場面にも、何気ない一つの動きにも、演出家が考えるべきことがあります。
だから私は、こう思うのです。
演出の仕事に、大きいも小さいもない。 最後まで読んでくださって、ありがとうございます。 中間裕子(Yuko Ai Nakama)





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