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感動をつくる人たち|Season3第10話「ショーは、いつ始まるのか」

4 日前
読了時間: 6分

― オープニングのつくり方 ―

ショーのオープニング。

皆さんは、どんな始まり方を思い浮かべますか?

華やかな音楽とともに幕が上がり、出演者たちが次々と登場する。

照明が一斉に輝き、ステージいっぱいに歌とダンスが広がる。

そんな光景を思い浮かべる方も多いかもしれません。

もちろん、それもオープニングのひとつです。

でも、ショーの始まり方には、さまざまな方法があります。

私がオープニングを考えるとき、まず思うのは、

「このショーの幕を、どうやって上げようか。」

そして、

「観客の心を、どうやってつかもうか。」

ということです。

会場によっても、作品のテーマによっても、その答えは変わります。

そして、もうひとつ。

私は、開演前のBGMから、すでにショーの雰囲気づくりが始まっていると考えています。

今回は、そんなオープニングのお話です。

幕が上がる前のサプライズ

2016年、東京ディズニーシー15周年を記念して、全国ツアーのコンサートが開催されました。

『東京ディズニーシー15周年 “ザ・イヤー・オブ・ウィッシュ” イン・コンサート』

このコンサートでは、ちょっと変わったオープニングに挑戦しました。

会場に入っていらした観客の皆さんに、まるで東京ディズニーシーのパークを訪れたような気持ちになっていただきたい。 そこで、開場中のBGMには、東京ディズニーシーのエントランスで昼間に流れている、冨田勲さん作曲の『アクアスフィア・プラザ~デイ』を使用しました。


開演までの30分以上、CDの一部分をループさせながら流し続けます。

ところが、この音楽には、ちょっとした仕掛けがありました。

開演が近づくと、舞台上の紗幕の向こう側では、オーケストラのメンバーが少しずつ自分の席に着き始めます。

軽くチューニングを行い、準備を整えていきます。

そして、あらかじめ音響スタッフと決めておいたポイントから、CDの音楽を、少しずつオーケストラの生演奏へと切り替えていくのです。

観客の皆さんには、その変化に気づかれないように。

そして、いよいよ開演。

紗幕が透けると、そこには、すでに演奏しているオーケストラの姿が現れます。

「えっ!? いつから生演奏だったの?」

観客の皆さんは、びっくり!

そうなんです。

さっきまでCDで聴いていたと思っていた音楽が、いつの間にか、生のオーケストラの演奏になっていたのです。


このコンサートの最初のサプライズは、大成功でした。(笑)


華やかなファンファーレも、大きな舞台装置の転換もありません。


ただ、ずっと流れていた音楽が、いつの間にか生演奏に変わっている。

そして、それに気づいた瞬間、観客の皆さんに驚きが生まれる。

こんなオープニングもあるのです。

観客の視線を動かす

もうひとつ、違った始まり方をご紹介しましょう。

2023年から2024年へのカウントダウン。 品川プリンスホテル主催のイベントで、アクアパーク品川の水族館を会場にしたショーを演出しました。

会場となったのは、イルカが泳ぐ円形のプールを取り囲むように客席が設置された、

約270度の空間です。

通常の劇場とは違い、正面にひとつの舞台があるわけではありません。

正面2階にはバンドの演奏エリア。そして、プールを囲む客席側には、3つの小さなステージを設置しました。

※アクアパーク品川・カウントダウンショーのステージ設営中

この会場には、通常の劇場のような舞台袖がありません。 つまり、シンガーやダンサーたちは、客席側から登場しなければならないのです。

さて、どうやって登場させようか。

ここで考えたのが、観客の視線を誘導することでした。

ショーは開演前から始まっています。

会場となる階層の入口付近では、アトモスバンドが演奏。

客席エリアでは、サウンドスーツ・パフォーマーたちが、席に着いたお客さまを楽しませています。

開演を待つ時間から、会場全体がショーの世界に包まれていくのです。

そして、開演のおよそ3分前。

2階のバンドエリアに、アコーディオン奏者が登場します。

このショーのテーマは、世界の音楽。

アコーディオンのソロ演奏で、まずはフランスの雰囲気を感じていただきました。

やがて演奏が終わり、会場は暗転。

ショーの開演を告げるアナウンスが流れ、2階のバンドエリアにはファンファーレ隊がスタンバイ。

そして、ファンファーレが始まり、観客の視線は、一斉に2階へ。

実は、ここが大切なのです。

皆さんがファンファーレに注目している間に、シンガーとダンサーたちは客席通路へ移動していきます。

そして、ファンファーレが終わった瞬間!

華やかなイントロが鳴り響き、シンガーとダンサーたちが、客席通路から3つのステージへと駆け上がります。

客席からは自然に手拍子が始まり、会場は大いに盛り上がりました。

このオープニングで、ファンファーレは単に開演を華やかに告げるだけのものではありませんでした。

観客の視線を2階へ集め、その間に、シンガーとダンサーたちが登場するための準備を整える。

そして、音楽の変化とともに、今度は3つのステージへと視線を導きます。

会場の構造に合わせて、何を、いつ、どこから見せるのか。

そんなことを考えるのも、オープニングをつくる仕事のひとつです。

演出家の体内時計

では、オープニングナンバーには、どのくらいの時間をかけるのでしょうか。

もちろん、作品によって違います。

私の場合、20分から30分程度のショーであれば、オープニングナンバーは2分半から3分くらいになることが多いと思います。

どうやって、その時間を決めているのか。

うーん。

体内時計でしょうか。(笑)

長年ショーをつくっていると、音楽を聴きながら、舞台の景色が頭の中で動き始めます。

それは、静止画ではなく、映像のようなもの。

音楽に合わせて出演者が動き、照明が変わり、次の場面へと展開していく。

その流れを考えていると、自然と、そのくらいの時間になっていることが多いのです。


大切なのは、その時間の中で、観客に何を伝えられるか。


たとえば、これから何が始まるのか、まったく知らずに客席に座った方がいたとしても、

オープニングナンバーを観ただけで、レビューショーなのか、ミュージカルショーなのか。

せめて、そのジャンルだけでも感じ取っていただけたらいい。

そして、作品のテーマまで伝われば、その後のショーを、もっと楽しんでいただけるのではないでしょうか。

ショーは、まだ始まったばかり

静かに始まるオープニング。

華やかな音楽とともに始まるオープニング。

観客を驚かせるものもあれば、最初から一緒に楽しんでもらうものもあります。

どんな始まり方を選ぶかは、作品によって違います。

ただ、私がステージショーのオープニングで目指しているのは、

「もう、すっかり夢中!」

と、思っていただけること。

そして、

「この先、いったい何が起こるんだろう!」

そんな期待も持ち続けていただけたら、嬉しいですね。

なぜなら、

ショーは、まだ始まったばかりなのですから。 最後まで読んでくださって、ありがとうございます。 中間裕子(Yuko Ai Nakama)

 
 
 

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