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感動をつくる人たち|Season3 第1話 なぜ、Swing Jazzは愛され続けるのか

9月30日
読了時間: 4分

皆さんにとって、「懐メロ」と「スタンダード」の違いって、なんですか?

私は、こんなふうに思います。

懐メロは、過去を思い出す音楽。 スタンダードは、過去から現在まで演奏され続ける音楽。

もちろん、これは私なりの捉え方です。

でも、Swing Jazzの世界に長く関わってきて、この「演奏され続ける」ということに、スタンダードという音楽の魅力があるように思うのです。


私は、ひとつのSwing Jazzのショーをつくりました。

Big Bandがステージにいて、生で演奏する。

その前でシンガーが歌い、大人数のダンサーが踊り、タップダンサーがリズムを刻む。

そこで使ったのは、1930年代、40年代を中心としたSwing Jazzの名曲たちでした。

でも私は、出演者たちに、

「1930年代、40年代へタイムスリップしているわけではない」

と伝えていました。

昔の人を演じるのではありません。

今を生きている人たちが、今、演奏し、今、歌い、今、踊っている。

あくまでも、これはライブショーだからです。

ただし、その時代のStyleは大切にしました。

当時のアメリカ映画を観て、所作を研究してもらう。

女性なら、紅茶を飲む仕草ひとつにも、その時代らしさがある。

笑い方。リアクション。手の表情。

男性にも、その時代のアメリカ男性らしい振る舞いを研究してもらいました。

時代を再現するのではない。

その時代のStyleをまとって、今を生きる。

そんなSwing Jazzの世界でした。

その後、

作品を大きくリニューアルすることになりました。 新しい楽曲を考える時には、数名のバンドメンバーと、演奏したい曲について話し合いました。

改めて、リニューアル後に使っていた曲を並べてみると、

『It Don't Mean a Thing』『Night and Day』『Take the “A” Train』『The Lady Is a Tramp』『Stompin' at the Savoy』『Jumpin' Jive』『Diga Diga Doo』『Cheek to Cheek』『Four Brothers』『All of Me』そして『Sing, Sing, Sing』。

こうして見ると、

スタンダードのオンパレードです。(笑)

でも、この曲たちが面白いのは、「昔の有名な曲」だからではないと思うのです。

たとえば『The Lady Is a Tramp』。

若い世代の中には、Tony BennettとLady Gagaが歌ったことで、この曲を知った人もいるでしょう。

『Night and Day』なら、宝塚ファンには馴染みのあるナンバーかもしれません。

『Take the “A” Train』や『Cheek to Cheek』、『All of Me』。

映画、舞台、ライブ、レコード。

人によって、初めて出会った場所も時代も違います。

そして『Sing, Sing, Sing』。

1930年代に生まれた曲なのに、今でもBig Bandの演奏を聴けば盛り上がる。

私自身、銀座のJazzのお店へ遊びに行った時にも、この曲が演奏されていました。

何度聴いても、

やっぱり、カッコいい。

ある年配のお客様から、ショーをご覧になった後で、

「なんだか、懐かしい」

と言っていただいたことがあります。

私が、

「当時のダンスホールを思い出しますか?」

と尋ねると、

「思い出すよ。」

と、遠い目をされました。

その言葉が、今でも心に残っています。

同じSwing Jazzを聴いていても、若い人には新鮮に聞こえる。

その時代の音楽とともに青春を過ごした人には、昔の記憶が蘇る。

子どもたちは、また別の入口からこの音楽と出会う。

同じ客席に座っていても、一人ひとり、音楽へ入っていく扉が違うのです。

考えてみれば、それが「スタンダード」なのかもしれません。

ひとつの時代に生まれた曲が、そこで終わらない。

次の世代のミュージシャンが演奏する。

別の歌手が歌う。

新しいアレンジが生まれる。

映画や舞台で使われる。

そして、それまでその曲を知らなかった人が、

初めて出会う。

1930年代に生まれた曲でも、2020年代に初めて聴いた人にとっては、

その日が、その曲との最初の日です。

だから、

ある人には懐かしく、ある人には新しい。でも、誰にとっても「昔の音楽」だけでは終わらない。それが、Swing Jazzなのかもしれない。 このSwing Jazzのショーは、2回のリニューアルを重ねながら、19年間続きました。

私はその間、この音楽を「古い」と感じたことがありませんでした。


それは、曲そのものがずっと演奏され続けてきたからなのかもしれません。

そして私たちもまた、

昔のSwing Jazzを保存していたわけではありません。

その時、その舞台にいる演奏家が演奏する。

その時のシンガーが歌う。

その時のダンサーが踊る。

そして、その日の客席にいるお客様が聴く。

音楽は、いつも現在形でした。

最初の問いに戻ります。

皆さんにとって、

「懐メロ」と「スタンダード」の違いって、なんですか?

私は、やっぱりこう思います。

懐メロは、過去を思い出す音楽。スタンダードは、過去から現在まで演奏され続ける音楽。

そして、演奏され続ける限り、そこにはまた、新しい出会いが生まれる。

19年間、この音楽と一緒に仕事ができたこと。

今振り返ると、とても幸せな時間だったと思います。

今日、9月30日。

あのSwing Jazzの世界が幕を閉じてから、一年。

でも、音楽は終わっていません。

どこかのステージで、どこかのJazz Clubで、そして、誰かの初めての一曲として。

今日もきっと、Swingしていることでしょう。

Season3。

ここからは、「演出する」という仕事について、少しずつ書いていこうと思います。 読んでいただき ありがとうございました。 

中間裕子(Yuko.Ai.Nakama)

 
 
 

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