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感動をつくる人の原点|Season2 第21話 心を動かされた夜

9月4日
読了時間: 2分

一時期、ニューヨークへよく行く機会がありました。


その時は、必ず時間を作って、本場ブロードウェイの舞台を観に行っていました。


客席に座ると、どうしても演出家や振付師としての目で観てしまいます。

「この転換、面白いな。」

「この照明、どうなっているんだろう。」

これはもう、職業病のようなものです。(笑)


それでも時々、そんなことを考える余裕さえなくなるほど、作品の世界に引き込まれることがありました。


1997年11月頃、まだ開幕して間もないミュージカル『ライオンキング』を観た時も、そうでした。


作品についてほとんど何も知らずに劇場へ入った私は、次々と目の前に現れる光景に、ただ圧倒されました。


客席の通路に現れる、巨大な動物のパペットたち。

劇場を包み込むように響く、生のパーカッション。

それまで見たことのない表現や、独創的な衣装。


一つひとつに驚きながら、私の頭の中にあったのは、

「こんな表現があるんだ!」

という思いでした。


そして終演後。


興奮したまま劇場を出たのですが、その時の私はニューヨークを一人で旅していました。


だから、

この感動を、誰にも話せない。(笑)

それが、なんとももどかしかったことを覚えています。


舞台の上にいた出演者が、客席へ降りていく。

それ自体は、以前からある演出手法です。


でも、あの夜、私が驚いたのは、単に出演者が客席に登場したことではありませんでした。


巨大な動物のパペットたちが客席の通路を進み、それまで舞台の上にあった世界が、突然、自分のすぐそばまでやってくる。


「えっ、こんな登場の仕方をするんだ!」

その瞬間、舞台と客席の間にあった境界がなくなり、自分まで作品の世界の中へ連れていかれたような感覚がありました。



それ以来、私が作品の中で客席を使う時にも、ただ出演者を客席へ登場させるだけではなく、 そこに、サプライズと喜びを持っていきたい。

そう考えるようになりました。


舞台の世界が、客席へ広がっていく。


そして、お客様自身も、いつの間にかその世界の中にいる。



あの夜、私が受け取ったものは、「客席を使う」という演出方法ではなく、

作品の世界を、客席まで届けるということ。

それだったのだと思います。





読んでいただき ありがとうございました。

中間裕子(Yuko.Ai.Nakama)


 
 
 

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