感動をつくる人の原点|Season2 第22話 想像を超えた舞台

1995年頃、初めてラスベガスでショーを観た時のことを、今でもよく覚えています。
最初に観たのは、MGMグランドで上演されていた『EFX』でした。
それまでにも、日本でマジックショーを観たことはありましたが、この時、目の前で繰り広げられたマジックは、まったくスケールが違いました。
椅子やテーブルが、空中に浮かんでいく。
「えっ、どうなっているの?」
考えても、まったく分かりません。(笑)
まさに、度肝を抜かれた。
ラスベガスで最初に出会ったのは、そんなショーでした。
その数年後、今度は『O』を観ました。
幕が開くと、大きな赤い布が目の前から一気に消えていく。
そして、その向こうに現れたのは、水でした。
「えっ、ここ、プールなの?」
ところが、まだ驚きは続きます。
水面には、人が潜って待っているような気配はありません。
泡も見えない。
それなのに突然、水の中から人が現れる。
「どこにいたの?」
もう、それだけで不思議でした。(笑)
通常のサーカスなら、空中演技を終えた出演者は、下に張られたネットへ飛び降ります。
ところが『O』では、そのネットがない。
出演者たちは、空中から深いプールへ飛び込んでいくのです。
そして、それまで深いプールだった場所が、いつの間にか広い舞台へと姿を変えている。
水中、水面、舞台、そして空中。
そのすべてが、一つの舞台になっていました。
次から次へと現れる想像を超えた光景に、気がつけば、仕掛けのことなど忘れて、ただ一人の観客として、その世界にすっかり引き込まれていました。
その後、『KÀ』を観た時は、開演する前から驚かされました。
まだ客入れの時間なのに、客席の両側では、出演者たちが大きな滑車やロープを使って、登ったり、降りたりしている。
ショーが始まる前から、その空間全体で、観客を『KÀ』の世界へ誘っていたのです。
そして、ショーが始まると、さらに驚きの連続でした。 物語の中心にいるのは、戦いによって離れ離れになってしまう双子の兄妹。
妹が船で逃げる場面では嵐に遭い、やがて船は沈んでいきます。
その場面では、空中を使って、まるで出演者たちが海の中へ潜っていくように見せていく。本当に水があるわけではありません。
それなのに、そこには海の中の世界が見えてくる。
さらに、舞台いっぱいに砂浜が広がる場面がありました。
砂の中から、大きなカニやヒトデ、ウミガメ、虫のような生き物たちが現れる。
どこかユーモラスで、私はこの場面がとても好きでした。
ところが、その砂浜だった巨大な舞台が、今度はゆっくりと傾き始めます。
砂が、舞台の下へ流れ落ちていく。
そして、それまで砂浜だった舞台が、やがて巨大な壁のように立ち上がる。
その壁を出演者たちが登り、そこへ矢が次々と突き刺さっていく。
一つの舞台が、砂浜になり、崖になり、巨大な壁にもなる。
舞台装置が物語の背景にあるのではなく、舞台そのものが姿を変えながら、物語を動かしていく。
その発想に、私は驚かされました。
『O』では、本物の水を使った舞台に驚かされ、
『KÀ』では、水がなくても海の中の世界をつくり出し、観客を物語の中へ引き込んでいく。
なにしろ、すごかった。(笑)
ラスベガスでショーを観るたびに、私がそれまで知っていた「舞台」というものの常識が、次々と壊されていきました。
水中も、水面も、空中も。
そして、舞台そのものまで。
大切なのは、
「舞台とは、こういうもの。」
と、自分で可能性を狭めないこと。
固定観念にとらわれず、自由な発想で、新しい可能性を探し続ける。
その先に、
まだ誰も見たことのない舞台が生まれる。
ラスベガスで出会った数々のショーは、そんなことを、私に教えてくれました。
読んでいただき ありがとうございました。
中間裕子(Yuko.Ai.Nakama)






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