感動をつくる人の原点|Season2 第24話 演出家の引き出し

演出家のアイデアは、どこから生まれてくるのだろう。
あらためて考えてみると、自分の「引き出し」には、本当にいろいろなものが入っているんだろうな、と思います。
宝塚で、演じたり、観てきた舞台。
ブロードウェイやラスベガスで出会った、想像を超えるようなショー。
でも、それだけではありません。
子どもの頃に見ていた喜劇やテレビ番組。
思わず笑ってしまった場面。
音楽やダンス。
旅先で見た景色や、何気なく目にした出来事。
考えてみれば、演出家になってから「引き出し」を作り始めたわけではありません。
演出のために、何かを集めていたわけでもありません。
ただ面白くて笑ったり、驚いたり、感動したり。
そんなものが、いつの間にか、自分の中に仕舞われていたのだと思います。
だからといって、作品を創る時、
「さて、引き出しの中から何か探してみよう。」
そう考えているわけでもありません。
むしろ、アイデアは突然やってきます。
音楽の打ち合わせをしている時。
リハーサルをしている時。
お風呂に入っている時。
時には、夢の中でも。
「あっ、これだ!」
突然、何かが浮かぶ。
私は昔から、そんな瞬間を、
「神が降りてきた!」
と呼んでいました。(笑) もちろん、宗教的な意味ではありません。
どこからともなく突然アイデアが降ってきたように感じる。
私にとっては、そんな瞬間を表す言葉です。
「神が降りてくる」のは、時間も場所も選びません。
たとえば、あるクリスマスのショーを創っていた時のことです。
何気なくテレビをつけると、ニュースで運動会の大玉転がしが映っていました。
赤い大きな玉が、ゴロゴロと転がっていく。
それを見た瞬間、
「これだ!」
ステージでは、小さな白い雪玉を出演者が転がしていく。
その雪玉が舞台袖へ入ると、今度は大きくなった雪玉が転がってくる。
それを反対側の袖へ転がすと、次に現れるのは、さらに巨大な雪玉。
出演者たちは、びっくりして逃げていく。
テレビで何気なく見た大玉転がしが、そんな楽しいクリスマスのシーンに変わりました。
これも、私にとっては、
「神が降りてきた!」
瞬間のひとつでした。(笑)
振り返ってみても、
「あのアイデアは、何と何がつながって生まれたんだろう。」
そんなことを、私はあまり考えたことがありません。
でも、きっと私の中には、
これまで見てきたもの。
聞いてきたもの。
笑ったもの。
驚いたもの。
そして、心を動かされたもの。
そんなものが、知らないうちにたくさん引き出しに仕舞われていたのでしょう。
子どもの頃から今日まで。
何気なく過ごしてきた毎日の中で、少しずつ増えてきたもの。
そう考えると、
何でもない今日の出来事も、いつか新しい何かを生み出すために、知らないうちに、心のどこかに仕舞われていくのかもしれません。
読んでいただき ありがとうございました。
中間裕子(Yuko.Ai.Nakama)




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