感動をつくる人の原点|Season2 第6話 束の間のオアシス

予科生の一年が終わりました。 そして私は、 本科生になりました。 予科生は、たった一年。 でも、 あの一年は、 とても長く感じました。 だからこそ、 本科生になれた日。 私は、 心の中でこう思いました。 「やっと天国だ。」 (笑) 本科生になると、 予科生の頃は許されなかったことが、 色々と許されるようになりました。 制服の着こなし。 スカート丈。 ヒールの靴。 髪型。 お化粧。 娘役を目指す私は、 ポニーテールにしたり、 リボンをつけたり。 鏡を見る時間も、 少し楽しくなりました。 同期のお姉さんたちが、
「眉毛はこうするといいわよ。」
「ここはもう少しこうした方が可愛い。」
そんなふうに、 いろいろ教えてくれました。 まだ16歳。
やっぱり、
可愛くなれることは嬉しかったのです。 でも、 制服を自由に着こなせるようになったからといって、 のんびりしている時間などありませんでした。 私は、 学校が終わると、
声楽。 日本舞踊。 お琴。 タップダンス。 それぞれの個人レッスンへ向かいました。 同期のみんなも、
声楽。
クラシックバレエ。
タップダンス。 ピアノ。 それぞれが自分に必要なレッスンへ向かいます。 誰も、 真っすぐ家へ帰りません。 もっと上手になりたい。 その気持ちは、 みんな同じでした。 今思うと、 「いつ休んでいたんだろう。」 そう思うくらい、 毎日忙しく過ごしていました。 でも、 不思議と大変だった記憶より、 楽しかった記憶の方が残っています。
学校の授業も、 本当に盛りだくさんでした。 日本舞踊だけでも、
花柳流。 藤間流。 地唄舞。 それぞれ違う流派を学びます。 そして、 今では少し珍しい授業もありました。 鼓笛行進です。 元自衛隊の男性教官のご指導で、 私たちは鼓笛隊を組んでいました。 大太鼓。 中太鼓。 小太鼓。 シンバル。 フルート。 ピッコロ。 リラベル。 そして私は、 ピアノを習っていたこともあり、 アコーディオンを担当しました。 同期四十数人が一緒に演奏しながら歩く姿は、 なかなか迫力があったと思います。 御堂筋パレードに参加したり、 高校生の合唱コンクールで演奏したり。 今振り返ると、 この授業で学んでいたのは、 演奏だけではありませんでした。 横一列を揃えること。 歩幅を合わせること。 周りを見ること。 一人ではなく、 全体を感じること。 それは、 後にレビューの群舞や、 ラインダンスにもつながっていったのだと思います。 文化祭もありました。 毎日が本当に充実していました。 予科生の一年は、 あんなに長く感じたのに。 本科生の一年は、 驚くほど早く過ぎていきました。 夢中になっていたからでしょうか。 気がつけば、 もう初舞台の稽古が始まっていました。 そして、 また稽古着が変わりました。
本科生で、許された好きな色とデザインのレオタードではありません。 全員、 黒。
黒いレオタード。 黒いタイツ。 そこに、白いスニーカー。
劇団の中では、 私たちはまた最最最下級生になります。
「やっと天国だ。」 そう思えた時間は、
本当に、
束の間のオアシスでした。(笑) でも、 不思議でした。
大変になることは分かっているのに、 嫌だとは思いませんでした。
それよりも、 「いよいよ初舞台だ。」 その気持ちの方が、 ずっと大きかったのです。
振り返ると、
音楽学校の二年間は、青春そのものでした。
笑って。
学んで。
仲間と励まし合って。
団結して。
夢中になって毎日を過ごす。
私は、二年間、無欠席・無遅刻・無早退で、皆勤賞をいただきました。
そして気がつけば、 次に待っていたのは、 憧れ続けた舞台でした。
本科生の私たちは、 いよいよ初舞台生になります。
読んでくださってありがとうございます。
中間裕子(Yuko.Ai.Nakama)





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